第521話 決死の防衛/ラネル

ボロボロの城壁を盾に、私たちは戦いに挑んだ。敵はゾロゾロと城のある丘へと向かって這い上がって来ていた。


エチゴには無双鉄騎団の技術で作られた強力な砲門が六門ある。命中すれば量産型の魔導機なら一撃で倒す事ができるけど、さすがに数が多く対処しきれない。


「砲撃は無視していい、接近する魔導機に狙いを絞れ!」


敵の艦砲射撃も容赦くな襲い掛かってくる。戦闘艦であるエチゴの装甲は厚く固いが無敵ではない。そのうち装甲は破られるので、敵艦の艦砲射撃を無視などできるわけないけど、接近された魔導機の攻撃の方が厄介との判断は正しい。


こちらの魔導機は五機しかないが、エチゴには砲撃兵器で武装した小型のライドホバーの砲車が七機が搭載されていた。砲撃兵器は、元々は魔導機に持たせる為に開発された魔光弾武器だったのだけど、魔導機に持たせるほどに小型化することができずに計画は停止されていた。それをエモウ軍がライドホバーに搭載することで実用化したものだ。


無双鉄騎団から提供された技術を利用した魔光弾武器の威力は、量産型魔導機にダメージを与えるには十分であった。城壁の上や穴に配置した砲車から、一秒間に五発という連射速度で敵魔導機に向けて放たれる。


想像以上の猛反撃に、敵の足は鈍ったようだ。なんとか艦砲と砲車の弾幕を逃れて上がってきた敵魔導機は、五機の味方機により駆逐された。これなら耐えきれると甘い考えが頭をよぎったが、やはり数の暴力には贖えない。敵の艦砲射撃により、エチゴの砲門の一つが破壊されたタイミングから徐々に押され始めた。


弾幕を突破してきた敵魔導機の一機に、味方の砲車の一つが破壊される。砲車を破壊した敵機は、駆けつけてきた味方魔導機が槍で串刺しにして破壊したが、さらに弾幕から生き残った三機の敵魔導機が迫ってくる。


敵の魔導機の接近に気付いた味方魔導機が槍を構えて迎え撃つ。剣を持った敵魔導機が、槍を構えた味方機に斬りかかる。それを槍で弾き返すと、素早く槍を戻し、味方魔導機は斬りかかった敵魔導機を一突きで倒した。


だけど、突き刺した槍を敵の機体から抜こうとしている隙を、残りの二機の敵魔導機が見逃すはずもなく、剣でめった刺しにされ味方機は無残に破壊された。


さらにエチゴの砲門がもう一門破壊される。防御にしようしている城壁もボロボロにされ、エチゴの装甲は敵の猛撃にさらされていた。このままでは砲門どころか、エチゴが破壊されるのも時間の問題であろう。


艦砲が少なくなり、弾幕を逃れて接近してくる魔導機が徐々に増えてきた。砲車もさらに破壊され、魔導機も一機撃墜された。そしてダメ押しとなる悲報が告げられる。


「北西方面からの敵の接近を確認! すでに数十機の魔導機が崖を登りきったようです!」


北西には険しい崖があったので、防御が手薄になっていた。敵はそこをついて侵入してきたようだ。その数に接近されればもうどうすることもできない。もはや後は神に祈るだけだと天を仰いだ。




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