第518話 背中の痛み
ヤマトが連邦の領地内に到着してすぐに、ラネルが俺たちと連絡する為に手配したライドホバーと合流した。通信障害の為に詳しい情報を聞けていなかったので、直接会って話を聞いた。
「各地で反乱などが起こり、現在、連邦内は大混乱に陥っています。ラネル大統領の命を狙う者も現れ、現在、大統領は安全な場所へと移動中です」
「また反乱かよ、メルタリアや他の西南諸国と同じだな」
ちょっと呆れたようにそう言うと、ジャンが真面目な表情で見解を話し始める。
「ここまでくると偶然とはいえんだろ。誰かが裏で手を引いているのは間違いないな」
「誰だよ、そんなことする奴は」
「一つだけ心当たりのある組織がある」
「本当かジャン!?」
「どう理由で、大陸中を混乱させているのかはわからないが、そんなことをできるのはそいつらだけだな」
「そいつらって誰だよ」
「結社ラフシャル、大陸のあらゆる国に結社員を忍ばせて暗躍する大組織だ」
「結社ラフシャルだって!? おい、ラフシャル、そんな組織いつの間に作ったんだ?」
何かの設計図をひたすら書いていたラフシャルに話を振ると、彼は興味ないのか目を設計図から離すこともなくこう返答する。
「僕の名は歴史的に有名だからね。ゆかりの地と言われている場所ではラフシャル饅頭なんてのがあるくらいだから組織名に使われていても驚きはしないよ」
言われてみれば確かにそうだな、歴史的人物から名前を取るなんて珍しくないか。
「それでラネル大統領が向かっている安全な場所というのはどこだ」
「アムリア王国です」
それを聞いたジャンは顔をしかめる。
「それはまずいな……」
「どうしてまずいんだ? ラネルの母国だし、信頼できる味方が大勢いるから安全なんじゃないのか?」
「ラネルの母国だってことは誰でも知ってるからまずいんだよ、彼女の命を狙っている連中ももちろん知っているだろ。それにアムリア王国は国として小さすぎる。もし結社ラフシャルの結社員が暗躍しているとすれば、そんな小さな国など裏で完全に掌握している可能性すらあるからな」
「だったら早くいかないと! そうだ、アルレオ弐でひとっ飛びして俺が先にいけばいいんだ」
「ふむ、そうした方がいいかもな、よし、勇太、先行してラネル大統領の救出に向かってくれ」
「任せておけ」
そう言ってすぐに格納庫へと向かおうとしたのだが、この話を聞いていた渚が俺の服を掴んでこう言う。
「勇太、私も連れてって……前みたいに飛びながらでもディアテナごと運べるでしょ?」
「確かに運べるけど、飛行速度は落ちるだろ。渚、お前がラネルたちの心配をするのはわかるけど、ここは俺に任せておけ、絶対に彼女を助けてみせる」
「勇太……わかった。だけど、ラネルたちを絶対に守ってね! 約束だよ!」
「わかった、約束する。俺が約束だけは守るの知ってるだろ? だから安心して待ってろ」
そう返事する、渚の表情が笑顔に変わった。そしてなぜか俺の背中を思いっきり叩いてこう言う。
「任せたよ、勇太! 私の親友を助けてきて!」
「いっ! 強すぎ叩きすぎだぞバカ! まあ、とにかく行ってくる!」
背中に痛みを感じながら俺はすぐに格納庫へと走った。ラネルの顔を頭に浮かべると、自然と走る速度があがった。
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