第506話 思わぬ再会/結衣

武者魔導機の容赦ない攻撃は続く── 複数の風の刃は半円形の軌跡を描きながら、エルヴァラ改の装甲を削る。だけど、一方的に攻撃を受けていたけど、ようやく敵の攻撃に慣れてきた。風の攻撃も見えるようになってきて、なんとか避けることができはじめる。


風の魔導撃に加え剣撃での連続攻撃も繰り出してきたが、ルーディア集中状態のいまなら対応できる。さらに集中力を高め、反撃に転じた。


黒色のオーラを強め、両手に持つ二本のレイピアに纏わせる。触れただけで大ダメージを与える死の牙と化したレイピアを前方でクロスするように構えると、一気に攻撃に転じ、無数の突きを繰り出す。数えられない残像が残るほどの連撃に、さすがの武者魔導機も慌てた様子を見せた。


武者魔導機は回避と剣での防御で対応するが全てを防ぐことはできず、やがて肩に命中する。そのレイピアの一撃は無骨な鎧のような部品を吹き飛ばし、武者魔導機のバランスを崩した。


肩を破壊されたことに怒ったわけではないと思うけど、武者魔導機のオーラが膨張して圧力が大きくなる。そしてレイピアの連続攻撃を、力強く剣を振り上げて強引に弾き返され止められると、振り上げた剣を、エルヴァラ改の頭に振り下ろしてきた。


なんとかレイピアをクロスにして振り下ろした剣を受け止める。巨大な岩が落ちてきたような衝撃に機体が軋んだ。しかし、とてつもない力に圧されながらも私はルーディア集中の練度さらにあげ、その圧を押しとどめながら力を貯める。そして一呼吸してタイミングを計り、貯めた力を一気に解放した。


解放された力は大きな黒いオーラに変わり、雷が落ちたような轟音を響かせて武者魔導機を押し飛ばした。よろめくように後退した武者魔導機は、驚いたようにこちらに顔を向ける。


さらに追撃を行おうとした時、武者魔導機からまさかの呼びかけがあった。


「漆黒の魔導機のライダーに問う、あなたの名を聞かせて欲しい」


武者魔導機のライダーの声は女性のようだった。さらに違和感を感じたのはその声を私は知っているような気がしたからだ。どこかで聞いた声……もう少しで思い出せそうだがあと少しが出てこない。


「人に名を聞くのなら自分がまずは名乗るべきではありませんか」


私の言葉に、一瞬の間をおいて驚くべき答えが返って来た。

「やはり白雪結衣さんでしたか……あなたとレイナさんがエリシア帝国の十軍神というのは聞いていました。この戦いでお二人に会えれば良いと思ってましたが……」


「まさか、そんな、あなたはもしかして……」

「はい、私です。クラス担任の南瑠璃子ですよ」


まさかの武者魔導機のライダーは南先生だった。しかし、再会の喜びよりも、いくつかの疑問が頭に浮かんだ。南先生のルーディア値は平凡な数値だったはず、今のこの強さは説明がつかないし、ラーシア王国のような強国にいるはずがない。そんな疑問を振り払うような事実を南先生は続けて話してきた。


「私だけではありません、ここには大勢のあなたのクラスメイトがいるのですよ。みなさん、結衣さんとの再会を喜びましょう」

「大勢のクラスメイト?」

言っている意味がわからなかったけど、まわりの敵機から次々と声をかけられ驚く。


「白雪さん、俺です、山倉伸介です」

「結衣、私よ、咲良よ」

「俺は堀部直志です!」

「原西っす! 白雪さん!」


信じられないことに周りにいる敵機がほとんどクラスメイトだったようだ。しかし、あまりに唐突な再会に、喜びを感じる余裕もなかった。

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