第505話 脅威の敵/結衣

武者魔導機はゆっくりとこちらに近づいてきた。私は戦闘に備えて身構える。


一瞬の間、瞬間移動したかと思うほどの速さで加速した武者魔導機は、右手に持った剣を振り上げるとエルヴァラ改に斬りかかって来た。私は半身捻るようにその鋭い剣撃を回避する。しかし、間髪入れずにすぐに二振り目の攻撃が襲い掛かってくる。それはレイピアで受け止めた。乾いた重い金属音が響き火花のような光の残骸が散り、剣とレイピアの押し合いになる。


くっ……これは予想以上の力……。


武者魔導機は威圧感だけではなかった。エルヴァラ改が力で押し負ける。私は一歩下がり武者魔導機の押し込みを受け流した。そして横移動しながらレイピアで高速の連続突きを繰り出す。


レイピアの攻撃は全て弾き返された。この武者魔導機、パワーやスピードだけではなく、剣技も卓越している。さばくのが難しいレイピアの突き攻撃をいともたやすく弾き返しながら、さらに反撃の剣撃を繰り出してくる。辛うじてそれを避けると、一度敵の間合いから逃れるように後退した。


「結衣!」


苦戦を感じたのか、メアリーが助けに入ってくる。だが、残念ながら実力差が大きい。攻撃を仕掛けたメアリーの操る魔導機、テラーメイルはまるで壁に打ち付けられたゴムボールのように大きく弾き飛ばされた。


「メアリー! 大丈夫!?」

「うっ…なんて力よ……まるで歯が立たない」


ダメージはあるようだが、なんとか無事なようで少しホッとした。


メアリーが手を出したことで、武者魔導機の周りに展開していた敵機も、こちらに参戦してきた。そのうちの一機をロゼッタのアグニアが丸焼きにする。アグニアから噴出する激しい炎に、敵機たちは一斉に動きを止める。


「結衣、周りの雑魚は私たちに任せなさい、貴方はあの強敵に集中して!」


ロゼッタは力量的に武者魔導機には勝てないと判断したようだ。過信するわけではないけど、この場であれに勝てる可能性があるとすれば私だけだと思う。


一呼吸大きく深呼吸すると、ルーディアを集中する。そして武者魔導機を一睨みした後、一気に間合いを詰めた。


武者魔導機は臆することなく、エルヴァラ改の接近を待ち構えている。そんな余裕の敵機に、私は準備していた魔導撃を繰り出す。


ダークマッシャー、黒いチリが武者魔導機を包み込むように一気に広がる。並みの魔導機の装甲なら数秒で腐食破壊する威力だが、やはりこの魔導機は普通ではない。魔導撃だろうか、武者魔導機の周りに突如現れた突風により、ダークマッシャーの黒いチリが四散させられる。さらに見えない鋭い風がエルヴァラ改に襲い掛かってくる。カンカンと音を立てて、衝撃が打ち付けられる。エルヴァラ改の強力な装甲だから耐えられているが、他の魔導機なら切り刻まれてバラバラにされているだろう。


戦況を確認する為に周りを見渡して驚愕する。ロゼッタやメアリーなど、私と共に行動している別動隊の面々は帝国屈指の精鋭なのは間違いない。しかし、武者魔導機と共に戦う敵はそんなエリシア帝国の精鋭と互角に戦っていた。エクスランダークラスならまだ理解できるが、ロゼッタは十軍神の一人で、頭一つ抜きんでた実力者だ。そんな彼女を抑え込めるライダーが敵にいるのは純粋に驚いた。


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