第500話 女の戦い 中編

審査委員とオヤジが揉めてイベントが中断されたが、清音が出てきて、恥ずかしいことするな、と怒られて何とか場が収まった。


再開して最初の一人目は、まさかのリンネカルロだった。彼女の登場で、会場は一気にさらなる盛り上がりを見せた。


「さすがはこの国の王女さまね、単純な人気では間違いなく一番ね」

「地の利もあるから、リンネカルロが優勝候補かな」


俺と渚はリンネカルロ有利と予想するが、オヤジは違った視点でそれを否定する。

「確かに有利なのは間違いないだろうが、新鮮さに欠けると言う弱点もある。もしかしたら意外なダークホースが優勝するかもしれんな」


人生経験があるオヤジの一言は重いが、ただの美女コンテストの予想だってのを思い出して軽く聞き流す。


ステージを少し歩いてアピールしていたリンネカルロは、おもむろに羽織っていた上着を脱いで真上に投げた。露出度の高い水着を着たバランスの取れた肉体があらわになると、会場は一層盛り上がりを見せた。


それにしてもリンネカルロがこんなに積極的になるなんて、優勝賞品はいったいなんなのか気になる。普通の商品でこんなサービスしないよな……。


会場の雰囲気が相まってか、リンネカルロの点数は97点とこれまでの最高点をだした。リンネカルロはその結果に満足したのか大喜びしている。よほど嬉しいのか、もう退場の時間なのに、いつまでもステージに残ってギャラリーの声に応えていた。結局、最後にはスタッフに強制的に退場させられてしまった。


次に登場したのはエミッツだった。自分の性別を否定している彼女がこんなイベントに出場していることに驚いたが、趣旨とはだいぶ違う形で登場してきた。


男装の麗人、彼女は女性が男性を演じる舞台俳優のような格好で、一切媚びる演出をすることはなかった。堂々とした風貌は美しいと言うより格好良く、会場の女性の心を一気に掴む。


美しい女性のコンテストという意味合いではこういうのもありなのかもしれない。現に会場はほかの出場者に負けないくらいの盛り上がりを見せていた。


しかし、審査委員のほとんどは男性だったのが影響してか点数は81点と伸び悩んだ。だけど本人はがっかりすることもなく、声援を送ってくれている女性客たちに向かって笑顔で手を振って応えていた。


次は誰だろう、エミッツとくればミルティーかなと思っていたのだけど、意外な人物が現れた。


「おっ、フィスティナか!」


フガクの美人操舵手であるフィスティナの登場に、会場は爆発的なざわめきが起こる。リンネカルロやアリュナの女性ライダーは普段から注目されていて、どうやらこの国ではファンクラブまであるという話だけど、めざといマニアたちもライドキャリアの操舵手まではマークしてなかったようだ。予想だにしない美人の登場に、観衆たちは驚きと興奮を抑えきれない。


フィスティナのスタイルはまさにパーフェクトボディー、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。さらに胸元が広く開いたドレスが男性の好奇心を荒げる。ちらりと太ももを露出する仕草に、暴動でも起きるのではないかという興奮の爆発が起こり、ちょっと怖くなるくらいだ。


この地方には珍しい透明感のある整った顔立ちは、想像以上に受け入れられたようだ。男性の本能を刺激された審査委員たちは98点の高得点を提示した。



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