第499話 女の戦い 前半

「ほら、始まるみたいだぞ」

オヤジは楽しみにしていたのか嬉しそうにそう言う。


司会のルロンドがイベントの説明を始めた。


「今からミス美女コンテストの参加者が一人ずつ登場して自分をアピールします。それを見て、審査委員10名が10点満点で採点して審査をおこない、一番高得点を出した女性が、初代ミス無双鉄騎団の栄誉を授かります!」


オーソドックスな感じだな。アピールって何するのかわからないけど、とにかくちょっと楽しみだ。


「それでは早速一人目に登場してもらいましょう! 戦場を飛び回る美しい蝶、操る魔導機にすら美がにじみ出る、奇跡の剣闘士女王、アリュナ!」


アリュナと紹介されたと同時に、軽快でホップなミュージックがなり始める。そして、後ろのゲートから、素材の少ない水着に身を包んだアリュナが登場する。アリュナは観衆と審査委員に向けて右手を挙げて挨拶すると、自分の体が良く見えるようにゆっくりとステージ上を歩く。時より止まって、豊満な胸を強調するポーズをとってアピールすると、おぉ~、と観衆が盛り上がりを見せた。


「こりゃたまらん、なかなか目の保養になるな」

「そうだな……」

俺とオヤジがアリュナの水着に目を奪われていると、なぜか渚が強烈な肘鉄を食らわしてきた。

「ぐふっ!」

「どこ見てんのよ、いやらしい!」

「し、真剣にイベントを見てるだけだ。へ、変な目でなんか見てないぞ!」

「師弟そっくりな目で見てて何言ってるのよ」

「なに! オヤジと同じ目をしてたのか!?」

「デレっとして、いつもの十倍、締まりがない目をしてたわよ!」


オヤジと同じ、スケベな大人の目と同じだったと指摘されたのがショックで何も言えない。


そうこうしているうちにアリュナのアピールタイムは終わった。どういう基準での審査かはわからないけど、十分、印象は残せたように思える。そんなアリュナの点数は、92点といきなりの高得点をたたきだした。


次に登場したのはエミナだった。ノリノリだったアリュナと違って、彼女の表情は暗い。おそらく誰かに無理やり参加させられたのだろう。しかし、軍人出身ということもあり、鍛えられた洗練されたボディーは魅力的で、十分、綺麗だと思った。


しかし、見た目はアリュナに引けを取らないエミナだったが、表情の暗さがマイナスとなったのか、点数は82点と伸び悩んだ。だけど終わったことに安心したのか、その後はようやく笑顔がみられた。


三番目に登場したのはまさかのライザだった。こちらはおそらくアリュナに無理やり参加させられたのだろう。露出の高い水着も彼女が選んだとは到底思えない。十中八九、アリュナのチョイスだと思われる。


ライザは少年ぽい体付きで、正直、アリュナやエミナほどの女性らしさはない。しかし、恥ずかしそうにする仕草が相まってか、グッとくる可愛さはあった。審査委員もその辺りを評価したのか91点と、予想に反する高得点だった。


四番手は清音だった。彼女はミス美女コンテストの意味がわかっているのか、わからないのか、なぜか袴のような服装で登場する。水着よりは女性をアピールするのに不利な感じはするが、キリっと勇ましく着こなす正装に十分な美しさは垣間見えた。


清音はすり足でステージを舞うと、おもむろに腰に差した剣を抜刀する。そして剣を華麗に振り、剣舞ともいえる舞を披露した。かなり美しい舞だったが、露出のなかったことが審査に影響したのか、90点と伸び悩んだ。


「どこを見ているんだ!! 非の打ち所がない、洗練された美の舞のどこが90点なのだ! もう一度よく見てみろ!!」


この点数に納得がいかないとオヤジが大声で審査委員に抗議したが聞き入れられることはなかった。



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