第498話 メインイベント

 一通り祭りを堪能した頃合いに、会場に大きなアナウンスが流れた。本日のメインであるイベントがこの後に開催されるという内容だった。


「メインイベントって、何があるの?」

「いや、俺も知らないんだよ。アリュナとかエミナが手伝いに行ってるのは聞いてるけど」


渚とメインイベントの話をしていると、大きな声で俺を呼ぶ声が聞こえてきた。見ると、両手にいっぱいに食べ物を持ったナナミたちがこちらにやってきていた。


「よう、ナナミ。お前たちもアナウンス聞いて来たのか」

「うん、メインイベントって言われたらこないわけにはいかないよね」

食べるだけに興味があるかと思ったけど、ちゃんとイベントも楽しむ意思はあったようだ。


「そうだ、ナナミ、何をやるかってアリュナから聞いてるか?」

「ナナミは知らないよ。聞いたけど、ナナミにはまだ早いって言ってた」

「ファルマやロルゴも聞いてないのか?」

「うん、教えてもらってないよ」

「おでも知らない」


これだけ聞いてない人間が多いとなると、意図的に隠してるのかもしれない。もしかしたら何かのサプライズを狙ってるのか?



メインイベントの会場となるステージの周りには沢山の人が集まってきていた。ざわざわと始まりを待っていると、司会役と思われる男性が現れる。


「皆さま、お待たせしました。本日の、メインイベントにお越しいただきありがとうございます。僭越ながらこの私、ルロンドが司会を務めさせていただきます」


ルロンドって誰だよと心の中ではツッコんでいたが、周りのギャラリーの反応を聞くと、どうやら有名なタレントのようで、キャーキャーと一部の女性たちが騒いでいる。


「それでは本日のメインイベントの内容をご紹介させていただきます」


「おっ、いよいよ何をするかわかるぞ」

「何するのかしら、私はカラオケだと思うんだけど」

「ナナミは、大食い大会だと思うよ。いっぱい食べるの楽しいよね」

「新型魔導機のお披露目とかがいいよね」

「おで、おで、何でもいい」


司会のルロンドが手を大袈裟に振ると、後ろに設置されたアーチ状のセットに掛けられた幕が外される。そこから現れたのは、無双鉄騎団ミス美女コンテストのタイトルだった。


俺と渚は目が点になり、唖然とする。こんなことを隠して進めていたのかと、呆れて言葉が出なかった。ナナミやファルマは意味がわかってないようでポカンとしていた。


「ね~ね~ミス美女コンテストって何?」

「一番の美女を決めるってことだ」

「一番の美女!? そんなの決めてどうするの?」


もっともな質問だ、俺もそう思う。なんと答えるか迷っていると、後ろから知った声が俺の代わりに答えてくれた。


「誰もが自分の好きが一番だと信じて疑わないからだ。だから白黒はっきりさせたくてこんな茶番を見たがる」


「あれ、オヤジ、旧剣豪団の連中と酒盛りじゃなかったのか?」

「みんな酔いつぶれてしまったからな、暇になったからこっちにきた。これには清音もでるようだからな、親として成長を見届ける義務もあるしな」

「そんなこと言いながら、本当は美女というフレーズに惹かれただけとかないですよね」


渚の意地悪な指摘は図星だったようで、オヤジは照れたように咳払いして誤魔化した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る