第497話 祭りの醍醐味
渚の破壊した景品の総額は12万ゴルドにもなった。手持ちのなかった渚に代わって結局、俺が支払うことになり、おかげで財布の中身が随分寂しくなってしまう。
「後でちゃんと返せよ」
「あら、中学の時、どうしても欲しいゲーム機買うから1万貸してくれって貸したお金、まだ返して貰ってなかったわよね。これでチャラじゃない?」
「あっ!! そういえばそんな事あったな……返してなかったっけ?」
「返して貰ってないわよ」
「い、いや、そもそも借りたのは1万だろ? 12万がチャラって酷くないか!?」
「貸したのは中学の時よ? そんなの利子に決まってるじゃない」
くっ……そんなふうに言われれば何も言い返せない。
「ほら、それより次はあれやりましょうよ」
「あれは……まさかと思うけど金魚すくいじゃないよな」
「そのまさかだったら面白くない?」
「いや、面白くはないぞ」
金魚すくいかどうか確信が持てないのは、すくう金魚が異常に巨大だからだ。見た目は俺の知っている金魚なのだが、大きさは立派な鯉より少し大きいくらいで、どうやってすくうのか思いつかない。
「これはどうやって遊ぶものなんだ?」
「はい、この網を使って猛魚を取るゲームです。取った猛魚はお持ち帰りいただけます」
「それだけ?」
「それだけですが、何か?」
網を使ってと言うが、金魚すくいに使うような脆い感じの網ではなく、大きな魚をすくっても壊れそうにない丈夫そうな網なので、ゲームになるのか疑問に思った。
「とりあえずやってみようよ」
「そうだな、これも無料みたいだからあまり考えなくてもいいか」
そう決めて、店番にプレイを告げると、いつの間にか集まっていたギャラリーからなぜか大きな歓声があがった。そして口々に、さすがは無双鉄騎団のライダー様は勇気があるだとか、俺にはとてもできないとか、なにやら不穏な言葉が飛び交う。ちょっと気にはなったが、意味がわからなかったので気にしないことにした。
短いが、巨大な金魚が十分はいるほどの大きな網を受け取ると、早速、近くを泳いできた金魚に狙いを定める。そして一気にすくおうと網を入れた瞬間、後ろにいる渚が叫んだ。
「勇太!! 危ない!!」
声を聞いて咄嗟に網を置いてプールから離れた。離れた瞬間、置いた網に金魚が食いついた。今まで大人しそうだった金魚は一変し、牙むき出しの恐ろしい形相に変わっていた。網は砕かれ、めちゃくちゃになる。もし、腕に食いつかれていたと想像したらゾッとする。
「お客さん、気を付けてください! 猛魚は獰猛な肉食魚ですから、前から近づいたら腕を食いちぎられますぜ!」
「先に言え!!」
まだ心臓がバクバクしている。こんな恐怖は魔導機での戦闘でも味わったことがなかった。
とにもかくにも、こんな危ない営業を認めるわけにはいかない。主催である無双鉄騎団の権限を使って営業停止を通告した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます