第493話 祭りの準備

この世界にも転移してきた地球人の影響からか祭りはあるそうだが、宗教的な要素が強いようで、祭りというより儀式ぽい感じが多いそうだ。渚の言っていたように、歓迎会を祭りのような感じで開催すると言ってもピンとくる者は少なかった。


「場所は屋外でいいのかい? 料理の調理とかはどうするんだい?」

「料理は屋台を並べて振舞おう。好きな物を好きなだけ選んで食べられるようにするんだ」

「うおぉおお、おで、たくさん食べていいのか?」

「いいぞ、思う存分堪能しろよ」

「やったー! ファルマ、ナナミ、一緒に食べよう」

「うん、そうだね」

「でも、ナナミ、ロルゴみたいにいっぱいは食べれないよ」

「おでが、ナナミの食べれなかった分も食べるから大丈夫」

「そか、なら大丈夫だね」


何が大丈夫なのか意味不明だが、ナナミたちも楽しそうでよかった。


「それで、酒は用意してくれるのか?」

オヤジは祭りには興味ないようだが、酒を飲む口実ができることは嬉しいようだ。


「もちろん、飲み放題の樽酒をいくつも用意するし、好きな酒を選んで注文できる屋台も設置する予定だ」

「ほう、そりゃ楽しみだな」

オヤジの質問にジャンが答える。祭りの運営などしたことないはずのジャンだが、俺と渚の少しの説明で理解したらしく、歓迎会祭りの全てのプランが頭に出来上がっているらしい。俺と渚は祭りの経験から案は出したが、結局、仕切りはジャンが進めてくれている。


「飲むのはいいですが、ほどほどにしてくださいよ」

「うるさい娘だな。いつもは厳しいお前の母さんも、こんな時の酒は自由に飲ませてくれたもんだぞ」

「私は母さんとは違います。どんな時も甘くはなりません!」

清音にきっぱりと言い切られ、オヤジは何も言い返せなくなった。それでも本番では飲ませてくれるんだろうなと予想する。


「おい、リンネカルロ、ちょっと頼まれてくれるか」

ジャンが何か思いついたのか、メモを見ながら言う。


「別によろしいですが、何をすればよろしいのですの?」

「全ての屋台を古株団員だけで回すのは無理があるから、王都にある飲食店に協力をお願いしたいんだ。王家の権限で呼びかけてくれるか?」

「わかりましたわ、ユーディンに話をしてみます」


王家の権限をこんなことで使っていいのかとも思うが、王家側は何の違和感もなくそれに応じる。ユーディンもたぶん快く受けてくれるんじゃないだろうか。


「料理と飲み物はこれでよし、後は催し物だな。お前たちの言う祭りとやらでは何をするのが定番なんだ?」

ジャンが俺と渚にそう聞いてきた。


「そうだな、地方によって違うけど、簡単なところだと、踊りだったり歌だったり、屋台で射的や金魚すくいなんかもあるな」


射的と金魚すくいは理解していないようだったけど、何やら頷いているので考えがまとまったようだ。その後、何かしらの業者を呼んで色々と発注して準備を進め始めた。

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