第494話 共同開催

歓迎会祭りは、無双鉄騎団だけのイベントの予定だったのだけど、ユーディンに協力を求めたことでおかしい方向へと向かってしまった。


「無双鉄騎団が面白そうなイベントをするというのが広く国民に知れ渡ってしまいまして……」


そう言いにくそうにそう切り出したのは王政府の高官で、ユーディンからの大事な提案があるとフガクにやってきていた。何が言いたいのか俺にはわからなかったが、ジャンはすぐに提案の内容を察した。


「なるほど、今回の祭りに国民も参加できないかという話だな」

「はい、今や王都の話題は無双鉄騎団が行う祭りのこと一色で、多くの者が参加したいと行政に訴えかけていまして……国民の熱を感じるかぎり、下手をすれば暴動に発展する懸念すらあります。王政府としましてはここは穏便にすませたく、今回の祭りを王国、無双鉄騎団の共同開催ということで行うことはできないかと……」


「共同開催のメリットがこちらにない。ユーディンはどういう条件を用意したんだ?」

「はい、開催にかんする費用の全額負担、それと王国全土から地の食材を取り寄せて提供するということでいかがでしょうか」

「悪くない条件だ。勇太、どうする?」

「費用を負担してくれるんならいいんじゃないか、地の食材も興味あるしな」

「だそうだ。しかし、主導はこちらでおこなうぞ、そちらからは資金と人材を提供してくれ」

「はい、もちろんです。すぐにプロジェクトチームを編成させます。その者らを自由に使ってください」


歓迎会祭りはメルタリア王国を巻き込んで、想像以上に大きな祭りになってしまいそうだ。しかし、本来の趣旨を忘れてはいけない。新規のメンバーたちを歓迎するイベントもきっちりおこなわないと……。


こうして歓迎会祭りの準備を進めるなかでも、追加の入団希望者がぞくぞくとやってきていた。その多くは元剣豪団のライダーたちで、清音やブリュンヒルデが無双鉄騎団にいることを知って集まって来たようだ。そして皆、オヤジが生きていることを知って驚き、涙を流して喜んでいる。


「大先生!! 生きてらっしゃったんですね!」

「人生最大の喜び! 大先生にまたお会いできるとは……」

「また、共に戦えるのですね大先生!!」


元剣豪団のメンバーの中にはクラスメイトの鉄平もいるが、奴は姿を現すことはなかった。俺がいることを嫌がったのかもしれない。



材料や屋台の設置のめどが立ち、いよいよ祭りの会場が準備され始めた。メルタリア国民も参加する為に、数十万人規模が想定されている。数百の屋台が並ぶ光景は圧巻の一言で、日本の大きな祭りに匹敵するかもしれない。


祭り会場の中心には大きな円形の舞台が設置された。ここで何かのイベントがおこなわれるそうだが、まだ詳細は教えてもらえなかった。たぶんカラオケ大会かなんかだと思うが、ちょっと楽しみではある。


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