第489話 戦後処理

エリシア帝国は撤退し、俺たちの仇であるデアグラフル侯爵は死んだ。脅威が完全に消えたわけではないけど、疲弊、疲労もあることから、一旦、連合軍は解散となり各々の国へと帰ることになった。そして俺たちも仲間のいるメルタリア王国へと向かおうとしたのだが……。


「剣闘士軍の代表が、無双鉄騎団の勇太殿にお会いしたときております」


アリュナに伝言だろうか? 特に理由はわからないが、今回の件では世話になったこともあり会わない選択肢はないだろう。会う旨を伝えて、簡易宿舎の方へ通して貰った。


「初めまして、剣闘士軍の代表のジュネージュと申します。尊敬する勇太さまにお会いできて光栄です」


驚いたことにジュネージュは物腰の柔らかい女性であった。格好も清楚なイメージで、おっさんで無骨な者が多い剣闘士の真逆の人間が現れたことに驚いた。


「尊敬って……俺はそんな大層な人間じゃないよ」

「何をおっしゃいますか、あの剣闘士王との伝説の一戦を思い出すと、今でも胸が熱くなります。あの試合は今では、剣闘士たちの間では酒の席の定番の話のネタになっているくらいです」

「そ、そうなんだ」


なんともそんな褒められ方をされるのも慣れて無いので照れ臭い。

「それで俺に用事があるそうだけど、なんだい?」

照れ隠しもあり、すぐに本題へと話を変える。


「はい、実は剣闘士の代表という立場から、多くの剣闘士から相談を受けまして、現実可能な話かどうか確認したくお伺いしました」

「現実可能? 俺に判断できるようなことなのかな」

「無双鉄騎団の団長である勇太さまだからこその判断かと」


確かにそうだったと思い出すくらい本人に自覚がない事実だが、無双鉄騎団のリーダーは確かに俺だ。

「それで、俺に何を判断して欲しいんだ」

「集団就職です」

「え!?」

「単刀直入に言います。剣闘士の多くが無双鉄騎団への入団を希望しております」


驚いた。そんなこと考えたこともなかったからだ。確かに傭兵団という集団を運営しているからには入りたいという人間がいてもおかしくはないのだろう。しかし、今まで無双鉄騎団に入りたいと思う人がいるってことが想像できていなかった。それだけ無名の集団という認識だったんだけど、ちょっとは名が売れてきたってことだろうか。


「ちなみに何人くらい希望しているんだ?」

「100名ほどです」

「100名!?」

「もちろん入団テストなどで振るいにかけてもらってかまいません。前向きに考えてもらえませんか」

「うち、そんなに給料良くないよ? かなり危険だし、あまりお勧めしないけどな……」

「勇太さまにアリュナさま、今回の戦いでともに戦った二人のライダーに憧れての決断ですから、待遇面はそれほど気にしていません」

「う~ん、わかった。ちょっとうちの金庫番と相談するから少し待ってくれ」


さすがに人を雇うとなると、お金を管理しているジャンの意見を聞かないと判断できない。そう答えて、ジャンに連絡を取ることにした。

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