第490話 大傭兵団

フガクに連絡を入れると、ジャンはムサシで他の国へ行っていると返事を貰った。

「どうしてそんなとこに行ってるんだ?」

「敵の裏工作の証拠を探りにだよ。ダーランはジャンの故郷らしいから適任だからね。それより至急の相談ってなんなんだい?」


アリュナにも関係している話なので、かいつまんで状況を説明した。内容を聞いたアリュナはそれほど驚くでもなく感想を言う。

「剣闘士の質も変わったわね。自由が信条の風来坊たちが、わざわざ不自由な団体職員になりたがるなんて」

「俺もそう思う。アリュナはどう思う、ジャンは剣闘士たちの入団に賛成するかな?」

「そんな人数雇う金はねえって即答するんじゃないかい。厳しい入団テストでかなりの数を振るいにかけて、少しだけ雇用するってのが無難なとこだろうね」


さすがによくわかっている。俺もアリュナと似たような予想をしていた。しかし、実際は大きく違っていた。



「え!? 希望者全員雇っていいのか!!」

「そうだ。剣闘士なら下手な国の正規兵より期待できる。うちのライダー強化プログラムを使えばすぐに戦力になるだろうからな」

「そりゃ、そうだろうけど、お金は大丈夫なのか?」

「エリシア帝国の侵攻のせいで、大陸中大きな紛争が溢れていているからな。でっかい仕事も取りやすい状況だから心配ねえだろう」

「まあ、金銭的に問題ないんなら俺は反対しないけど……」


さらにジャンは、ライダーの人数が増えることで魔導機やライドキャリアの購入、整備スタッフと船員の補充も即断する。どこからそんなお金が出てくるのか不思議だが、団の資金とは別に何か当てがあるようなことを話している。元商人というスキルがこういうところでも発揮されているのには感心した。


ダーランという国にいるジャンも、メルタリア王国へと向かうということで、無双鉄騎団はメルタリアで集合ということになった。集まるその間にも新しい団員の募集と、魔導機、ライドキャリアの購入も同時に進めるそうで、メルタリアでは一気に規模が大きくなった無双鉄騎団が誕生するかもしれない。



「ジュネージュ、君も希望者だったのか?」

剣闘士の代表で訪ねてきたジュネージュも実は無双鉄騎団の入団希望者だったようだ。入団希望の受付の列の一番最初に並んでいる彼女を見つけた俺は声を掛けた。


「もちろん、私もアリュナさま、勇太さまに憧れる剣闘士の一人ですので、憧れのお二人と共に戦えるようになるこの機会を逃すつもりはございません」


剣闘士の代表となるほどの人物なら実力も相当なものだろう。単純に心強さを感じる一方、そんな話をする時の彼女のギラギラとした目に少し恐怖を感じる。


100人ほどと聞いていた入団希望だが、ふたを開けてみると250名と大幅に増えていた。希望者全員受け入れると伝えていたので、ちょっと多いから振るいにかけるというわけにはいかない。こうなると購入する魔導機も増やさないといけないし、必然的に整備スタッフもさらに雇わなといけない。本当に資金は大丈夫なのかと心配になってきた。

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