第483話 情報の公開/ジャン

剣術指南殿のおかげで敵軍は逃げ出し、悠々とムサシへと帰ってくることができた。ムサシに戻ると、剣術指南殿とエミッツの二人と今後のことについて話をする。

「さてジャン、これからどうするのだ?」

「早々に連合諸国との話し合いに移るべきだけど、まだ証拠となる情報がきていませんので……とりあえず清音たちが帰ってきたらすぐに動けるように準備だけしたいと思います」


強硬策にでてきたダーラン共和国と表立って対立してしまったので、事を急ぐ必要はあるが、情報を確認していないのに動くわけにもいかない。


「それにしても清音たちは遅いな、もう戻っても良い頃合いだろうに」


確かに予定より時間がかかっている。俺たちと同様に襲撃されていることも考えられるが、達人クラスの清音がいるので身に対しては心配ないだろう。しかし、それで余計な時間がかかっている可能性はある。


噂をすればなんとやら、そんな話をしていると清音たちが帰って来た。案の定、襲撃を受けて予定が狂ったようで時間がかかったようだ。さらに話を聞いて驚いたのだが、襲撃は三度あったようだ。それなのに清音をはじめとする元剣豪団の面々は平然としていた。


「三度も襲撃されたのか? こっちは一度だけだったぞ」

なぜか残念そうに言う剣術指南殿、どうやらあの襲撃者との戦いはどこか物足りないものだったようだ。

「その代わりに魔導機戦をおこなったのでしょ? 新しくなったエクスカリバーはどうでしたか?」

「うむ、大賢者が言っていたパッシブストレングスなんたらとかいう機能だったかな……それにより前よりパワーもスピードも大幅に強化されている。あれならどのような相手にも後れを取ることはないだろう」

「そ、それはどれほどのものか興味があります。是非、手合わせ願いたいです」


そういえばラフシャルが言っていたな、剣術指南殿には下手な小細工は必要ないだろうと、その為にエクスカリバーの強化は単純な性能アップと、限界値の上昇を中心におこなっているとか。


それから始まった剣術指南殿たちの戦闘技術論の会話をBGMに、俺は清音の持ち帰った情報を確認した。


うむ、これなら、ブッダルガ大統領による情報操作を告発するには十分だろう。内容を確認した俺はすぐにフガクに連絡して、メルタリア王国と連絡を取り、情報の内容と各国への情報公開の許可を取り付けた。


それからシスターミュージーにお願いして、アリス大修道院の情報網を使って連合各国に情報と証拠を公開した。証拠は決定的なものであったこともあり、動揺は瞬くの間に広がり、各国はメルタリア王国に対しての方向性を考え直す必要に迫られると同時に、嘘の情報を流し南西諸国を陥れようとしたダーラン共和国とブッダルガ大統領に怒りの矛先を向けた。


孤立無援となったブッダルガももう終わりだろう。良くても大統領を解任、さらに逮捕され、しばらく塀の中の生活を強いられるだろう。悪ければ命を失うこともあるだろうと想像した時、まだ親友だったころのブッダルガを思い出した……ほんの少しの同情を感じた時、エミッツが大規模な軍の接近を知らせてきた。

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