第462話 迎撃する
俺は判断を迷っていた──ナナミを助けにいかなければいけないし、移動しようとするデアグラフル侯爵を放置するわけにもいかない。
俺の迷いにエミナが気を利かせる。
「デアグラフル侯爵は私とファルマに任せて、勇太はナナミを助けに行って」
冷静なエミナなら下手な事はしないだろう。感情的になったファルマの暴走も抑えてくれると信じデアグラフル侯爵は二人に任せることにした。ファルマに単独で動かないように念を押してナナミのもとへと急ぐ。
ナナミの守る峠入り口に到着した。みるとヴァジュラ改が、ピンクの魔導機と翼のある魔導機に攻撃を受けていた。ヴァジュラ改は何か特殊な攻撃を受けたのか、動きが鈍くなっているようだ。
「ナナミ! 今助けるぞ!」
まずは翼のある魔導機に向かって急降下しながら足から突っ込む。相手は蹴られるまで接近に気づかなかったようで、簡単に直撃した。さらに蹴りでバランスを崩した翼の魔導機の機体を掴んで振り回し、動きを抑え込む。やがて飛行能力を失ったのか、そのまま急降下した。
地表に降りると、また飛ばれると厄介なので、まずは強引に相手の翼の一つをもぎ取ってやった。翼をもがれた敵機は、暴れながらアルレオ弐から離れようとする。それを剣を抜きながら追いかける。
翼の魔導機を助けようと、ピンクの魔導機が鎌で襲い掛かって来た。かなり早いスピードだったが、直線的で読みやすい軌道だったので軽く避ける。あきらめず二撃目を仕掛けてくるが、剣で弾き返した。それによりピンクの魔導機は後ろにのけぞるようにバランスを崩した。追撃して斬り伏せようとしたが、相手は必死で避ける。しかし、完全に避けることはできず、鎌を持つ腕を切り落とした。
残った腕で斬りをとされた個所を抑えながら、劣勢を感じたのかピンクの魔導機は逃亡しようとする。武器も失ったので賢明な判断だが、簡単に逃がしてやるほど甘くはない。追いかけて勝負を終わらせようとしたが、その必要もなかった。
復活したヴァジュラ改が、ピンクの魔導機の行く手を阻む。
「もう、好き勝手して、ゆるさないんだから!」
ナナミは少し怒った感じで、ピンクの魔導機に斧を振り下ろす。相手はその攻撃を地面に転がるように避けようとするが、振り下ろされた斧は肩に触れる。強烈な威力だったようで、不自然なくらいに吹き飛んだ。
ヴァジュラ改は逃げるピンクの魔導機を追撃しようとするが、後方からゾロゾロと無数の敵機が近づいてきて妨害される。さらに翼の魔導機も守るように、アルレオ弐との間に魔導機で壁を作った。
どうやら劣勢を悟って、味方に進軍の命令を出したようだ。できればあの二機の強敵はここで倒しておきたい。邪魔な敵機を排除して、逃げる翼の魔導機を追いかけることにした。
剣で近くの敵機を破壊しながら魔光弾を連射する。ナナミも同じ考えのようで、邪魔する敵機を倒し始めた。しかし、敵の集団を圧倒するが、数が多すぎて逃げる二機の魔導機を捉えるまではいかない。
襲い掛かる敵機を次々斬り伏せながらタイミングを見計らい、上空に飛びあがる。そして逃げた二機を探した。すでに敵軍の群れの中に逃げ込んだピンクの魔導機と翼の魔導機を見つけることはできなかった。
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