第461話 危険反応/クルス

ドミニオンは吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。衝撃は感じたが機体にダメージはない。しかし、渾身の一撃が跳ね返されて、気持ちには少しのダメージを受けていた。


大きなリスクと引き換えの力がこの程度だろ言うの!? いや、それほど金色の魔導機の力が強力だということなのか……。


ドミニオンとの攻防の隙を見てアフロディテが金色の魔導機の後ろに回り込み、鎌で足首を狙って攻撃する。その攻撃を跳躍してかわす。だけど、それはレイナが仕掛けた罠であった。跳躍した瞬間、狙ったように準備していた魔導撃を放つ。アフロディテの目の前に現れた黒い丸い塊が跳躍中で回避できない金色の魔導機に直撃する。


バチバチと黒い稲光が金色を侵食していく。かなりの威力のある攻撃にみえるが、それでも金色の魔導機を大破させるまではいかなかった。


レイナの攻撃で攻勢になったのは不本意だが、今の状況を静止するのはあまりにもったいない。私はさらなる追撃を金色の魔導機におこなう。ドミニオンの真価は空にあるからこそ発揮される。まずは上空へと再び飛び立ち、急旋回しながら狙いを定めると、高威力の魔導撃を放った。


構えた槍の先端から、分身するように何本もの光の槍が放たれる。それが金色の魔導機に降り注ぐ。アフロディテの攻撃で動きを止められているので避けることなどできない。光の槍は全弾金色の魔導機に直撃した。


さすがにただではすまないだろう。そう思ったが、腹の立つことに金色の魔導機はまだ健在だった。少し弱ったとは思うけど、破損個所などはみられない。


「本当にしぶとい! レイナ! 同時の全力攻撃で片付けましょう!」

「わかりました!」


私とレイナは極限までルーディア集中する。さすがの金色の魔導機でも、魔覚醒した二つの究極攻撃を同時に受ければ消滅するはず……。


だが、その時、またもや、けたましく警告音が鳴り響いた。急な音に驚き、それから冷静に考えて驚愕した。


今、ドミニオンと私は魔覚醒で戦闘力が何倍にもなっている……ルーディア値で言えば100万を軽く越えるほどの数値にまで上昇しているのに……そのドミニオンが危険を察知した。この危険とは、今のドミニオンの力を遥かに超える存在が近づいているということを意味する。それに気が付いて驚愕したのだが、冷静に考えればそんな存在などいるわけない。おそらく激しい戦闘でセンサーが誤反応したのだろう。


そう結論付けて警報を無視しようと決めた時、強烈な衝撃を受けた。あまりに唐突なできごとに混乱する。敵の接近などなかったはず……金色の魔導機も防御中で、反撃の気配などなかった。


しかし、現実にドミニオンは何者かに攻撃を受けていた。強大な力で押さえつけられながらもみくちゃにされる。動きも封じられて抗う事もできずに、最後は無防備な状態となり墜落していく。


地面に叩きつけられると、大きな衝撃が走る。息が詰まるような痛みに呻きながら敵の姿を確認する。ドミニオンを叩き落した正体は白い魔導機だった。おそらく飛竜師団を殲滅した敵の飛行魔導機だと思う。その白い魔導機は信じられないパワーでドミニオンを押さえつけて、あろうことか、美しい天使の片翼をもぎ取った。


ドミニオンの痛みが視覚として伝わり、私は思わず叫んでいた。

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