第455話 空と地上から/ナナミ

勇太の情報通り、さっきのピンクの魔導機が翼のある魔導機と一緒に戻って来た。さらに二機の後ろからも十機ほど魔導機がついてきている。


さきほどと違って味方の動きが早い。近づくピンクの魔導機と翼のある魔導機に向けて、一斉にアローが放たれた。百近いアローが敵に降り注ぐ、見た目では無傷で済むようには見えなかったが、結果、敵機に傷一つ付けることはできなかった。翼の魔導機は、その象徴である大きな翼をマントを翻すように広げて全てのアローを弾き返した。


さらに翼の魔導機は空を飛んでアローを放った連合軍の魔導機に迫る。危ないと思った時にはもう遅く、アローを弾き返したように翼を大きく羽ばたかせると、たくさんの仲間の魔導機が竜巻のような風でバラバラに吹き飛ばされた。


味方を助けに行こうとしたけど、ピンクの魔導機と他の敵機がそうさせてくれなかった。次々と走り寄ってきてヴァジュラ改に攻撃を仕掛けてくる。攻撃するとすぐにさがり反撃の機会すら与えてくれない。


「もう、ナナミの邪魔しないで!」


イライラして思わずそう口走ってしまう。しかし、そんな言葉が敵に聞こえるわけもなく、さらに挑発的な攻撃を繰り返してくる。一度落ち着こう……冷静にならないと何もできない。ナナミは敵の攻撃のタイミングを見計らってカウンターで反撃の一撃を与えた。両手剣で攻撃してきた濃い青色の魔導機はガイアラブリュスによってバラバラに粉砕される。


ガイアラブリュスの威力を目の当たりにして、調子に乗っていた敵の魔導機たちも少し落ち着く。警戒して不用意に攻撃できなくなった。しかし、さっき戦ったピンクの魔導機は、他の敵機と違ってヴァジュラ改の力もガイアラブリュスの威力も知っている。恐れる仲間たちを気にすることもなく、一人でヴァジュラ改への挑発的攻撃を繰り出してきた。


またさっきと同じ展開になる……そう思ったけど、そうはならなかった。敵にはもう一人、ヴァジュラ改を恐れない者がいた。ピンクの魔導機に気を取られていた隙に、翼の魔導機が空から強襲してきた。


しまった! 翼の魔導機は仲間と戦闘中だと勝手に思い込み油断していた。このタイミングでの空からの攻撃は防ぎようがなかった。翼の魔導機の持つ長い槍の一撃は、絶大な威力を発揮する。強烈な衝撃を右肩に受けて、ヴァジュラ改は吹き飛ばされて地面に転がる。


地面に倒れたヴァジュラ改に向けて、ピンクの魔導機と他の敵機たちが群がるように襲い掛かってくる。倒れたままシールドで攻撃を防ごうとするけど全ては防ぎきれない。がんがん、ヴァジュラ改の装甲を容赦ない攻撃が打ち付ける。


「ちょっと! よってたかって酷いよ!」

転がり逃げようとするが、ピンクの魔導機の素早い攻撃からは逃れられない。恐怖の鎌が何度もヴァジュラ改に迫ってくる。


それでも、シールドとガイアラブリュスで攻撃を防ぎながらなんとか立ち上がる。だけど、そこを狙ってまたもや上空から翼の魔導機が襲い掛かってきた。背中から受けた槍の一撃でまたもや地面に転がされる。


今までにない窮地にちょっと焦りはじめた。打開策が思いつかない間も、容赦な攻撃が倒れたヴァジュラ改に襲い掛かってきた。

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