第453話 主天使/クルス
レイナのアフロディテからの通信は私を心底落胆させ、そして驚かせた。
「クルス司令官、敵の前線にとんでもなく強い魔導機がいます。私の直属部隊は全滅、あれを倒さなければ峠に入るのは難しいでしょ」
「十軍神の一人である貴方でも勝てなかったのですか!?」
「勝てなくはないのですけど、勝つには魔覚醒する必要がありそうでした。今はそれをしたくなかったという理由は、同じ十軍神の司令官なら理解してもらえますよね」
確かに魔覚醒は、我々十軍神に与えられた最後の切り札のようなもの……そう簡単に使える代物ではないし、リスクも伴う。
だけど、そうなると厄介ね。その強敵となる魔導機をどう片付けるか……数で押し殺すのは可能だろうけど、こちらの被害が馬鹿にならなくなる。くっ、不本意ではあるけど、ここはレイナと共闘するしかないようね。
「すぐにドミニオンの出撃準備をしなさい」
副官は私の言葉に信じられないといった表情でこう聞き返した。
「し、司令官が出撃するのですか!?」
「そうです。三度は言いませんよ、早急に準備しなさい!」
ドミニオンはアークエンジェルをベースに作った強力な魔導機……もちろん私の専用機で、他の誰にも動かすことはできない。なので、この魔導機の出撃は私の出撃を意味する。
「レイナ、私もすぐに出撃します。不本意ではありますけど、二人でその魔導機を叩きましょう」
「それは心強いですね、それでは、それまで後退して待つとします」
ドミニオンの準備中に、もう一つの懸念点が告げられる。それは飛竜師団を殲滅した、敵の空を飛ぶ魔導機についてだ。
「司令官、上空からの攻撃により、我が軍はかなりの損害がでています。なるべく早く対応しなければ、戦況に影響するかと思いますがいかがしますか」
「一般ライダーには対空能力もあるアサルトボウを装備させてるじゃないですか、そのうち撃墜するでしょ」
「しかし……」
「アサルトボウほどの武器を与えられながら対処できないのなら、ライダーの腕や現場指揮に問題があるのでしょう。そうなれば部隊長たちには厳しい罰を与えなければいけません。まあ、それでも対処できなかった時は、峠入り口の敵を片付けた後に私が処理しましょう」
敵の飛行魔導機が飛竜師団を殲滅したのは何かの間違いだろう。さらにいうなら空の王者であるドミニオンを操るこの私になら実力で飛竜師団を殲滅する力を持っている。結果が間違いでなく、それ相応の実力を有していたとしても負けるとは考えられない。
ドミニオンの出撃準備が整い、全軍の指揮を参謀長に任せて格納庫へと向かう。ドミニオンに搭乗すると、ハッチを開かせ出撃した。
「旗艦を守る親衛隊もドミニオンに続きなさい」
司令官が留守の旗艦の護衛など必要ない。この私がいる場所がエリシア帝国西方方面軍の最重要拠点である。親衛隊の七名の精鋭ライダーたちもそれを良く理解しているようで、短く了解してドミニオンの後に続いた。
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