第449話 予想外/クルス
ある程度の不測の事態は想定しているが、これほどまで自分の思惑とずれるとは思わなかった。
損害どころか、一機でも落されれば飛竜師団の師団長に厳しい罰を与えるつもりだったが、まさかあの短時間で殲滅するとは……このあまりに異常な状況に怒りを感じることもなく混乱している。しかしどういうことだ? エクスランダーで編成された部隊をたった二機で殲滅させるなんて、どう考えてもおかしい。
敵はどんなトリックを使ったのか……それとも私は何か見落としているのか……。
しかも地上の戦いも芳しくない。こちらが攻めにくい地形なのは承知しているが、地上にもエクスランダーが何人もいる。敵にトリプルハイランダーが数人いたところで強行突破できると予想していたが全て峠入り口で跳ね返されている。よほど強固な防御陣形で待ち構えていると思われる。
負けることはなくてもこのままでは被害が大きくなるばかりだ。ここは一度、体勢を立て直すことにする。全軍に攻撃を停止させ後退するように命令をだした。
後退するこちらを追撃してくる素振りはみせない。やはり守ることで精一杯で距離を取られると何もできないとみえる。
しかし、どうするか……このまま同じように攻めても状況は変わらない。やはり違うカードを使う必要があるかもしれない。
そう思っていると、そのカードの方から話を振って来た。声を聞くだけで不快になる存在だが、役に立つカードなのは間違いない。
「クルス司令官、一度全軍を後退させるとは随分と苦戦しているようですね。すでに私のアフロディテは準備完了しています。いつでもお願いしてくださいね」
「その必要はない……そう言いたいのですが、そうですね、そろそろ十軍神としての貴方の力を見たいとも思います。ここは少し、華麗な殲滅戦を披露してくださりますか」
「あら、そんなに期待されているとは恐縮です~ だけど、司令官からのお願いなら応えないわけにはいけないわね。それで私はどこを叩けば良いのですか?」
「そうね、峠の入り口の敵を叩いて突破口を開いてくれれば助かります」
「わかりました。それでは十軍神の一人、レイナと直属部隊はすぐに出撃して峠入り口を制圧します。このレイナの力を存分に堪能してください~」
この女に貸しを作るみたいで不快だが、利用していると考えればまだ我慢できる。成功すれば軍として良し、失敗すれば私個人の気が晴れる。どっちにしろ悪くはないだろう。
レイナの専用魔導機アフロディテは軽量型のスリムな見た目で、大きな鎌を武器としている。趣味の悪い武器の選択に性格がでているように思う。レイナ直属の部隊は10人ほどの少数部隊だが、ダブルエクスランダーばかりで構成されている文字通りの精鋭部隊だ。噂では十軍神候補だった者もいるそうで、かなりの戦闘力があると言われている。まあ、実際目にするのは初めてなので、不本意ながらどれほどのものなのか楽しみではある。
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