第448話 剣闘士の奮闘

敵の飛行部隊を殲滅したので、地上の戦いに参戦しようと降下する。ぱっと見て戦況は互角のようで、少数の味方側が頑張っているのがわかる。


特にナナミのヴァジュラ改の活躍は凄い。一番激しく攻撃を受けてる防衛箇所をほとんど一人で守り抜いているようだ。ヴァジュラ改の周りには破壊された敵魔導機が散らばっている。


そして意外に頑張っているのが剣闘士たちだ。戦いの専門家と言っても、戦争に関しては素人集団の彼らだが、慣れない連携もしてエリシアの正規軍と互角の戦いを繰り広げている。実力的にはエリシア帝国の魔導機の方が一枚も二枚も上手だと思うけど、エリシア帝国側は狭い渓谷に密集して思うように動けず、数ほど戦闘力を発揮できていない。陣形も展開できないバラバラの状態で、待ち構える連合軍に攻撃を仕掛けているが足枷を付けて戦っているようなもので、実力の半分もだせていないだろう。


全体の数こそはエリシア帝国が圧倒しているが、地形の関係で実際に戦闘に参加しているのは連合軍の方が多いように思う。エリシア帝国としては、飛行部隊でこの状況を打開するつもりだったのだろうけど、今はそんなものはないのでどうするつもりだろ。


さて、実際地上戦に参戦するとしてどうするか……峠の防衛戦はナナミに任せておけば大丈夫だろうし、剣闘士軍の活躍で優位とまではいかないまでも互角に戦っているので、急ぎ助けるまでとはなっていない。


まあ、考えてもしかない。とりあえず俺は、敵の戦力を大幅に削ろうと、敵陣の上を低空で飛行しながら魔光弾を撃ちまくることにした。さながら低空爆撃のような攻撃が渓谷に密集するエリシア帝国軍を襲う。


予想だにしない攻撃を受けて、エリシア帝国軍は狭い渓谷を逃げ惑う。密集していることもあり、逃げ場所もなく混乱は損害を拡大させる。混乱の中、アローなどで反撃してくる敵機もあったが、動く目標に当てるのは至難の業なのか惜しい攻撃すらない。飛行する敵機を簡単に撃ち抜くファルマがいかに優れた狙撃手なのか改めて理解した。


さらにエリシア帝国軍の真っただ中で、不審な爆発や、突然、魔導機が倒れるなどの事故が多発した。おそらく、エミナがデアグラフル侯爵を探しながら破壊工作も同時におこなっていると思われる。


エミナの破壊工作、ナナミの無双、剣闘士たちの奮闘、それとアルレオ弐の低空爆撃により戦況は徐々に連合軍側に傾いて来た。焦るエリシア帝国軍だが、力押しでどうにかなるとしか考えていなかったのか今のところ大きな戦術の変更がおこなわれる気配はない。


このままいけば勝てそうだな……。


そう思ったのだけど、やはりエリシア帝国は一筋縄ではいかなかった。何かの命令が全軍に通達されたのか、攻撃が一時停止された。そしてゾロゾロと全軍が後退を始める。それを見て連合軍は撤退すると思ったのか大きく盛り上がりをみせる。


勝ったぞ、とか、エリシア帝国なんて大したことないなど、口々に勝利の雄たけびを上げている。いや、流石にこのまま引き下がるとは思えないので気が早いんじゃないのかと思う。


案の定、後退したのは陣形を整えて次の策を講じる為だったようで、ある一定の距離を取ると後退が停止した。


次はどういう手で来るのか……俺は空からエリシア帝国軍を見ながらそう思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る