第442話 先制攻撃

発射された四元素砲は、ファルマの初撃でシールドがクールダウンにより無防備になったエリシアの魔導機群に襲い掛かる。装甲は剥がれ落ち、手足をもぎ取り、無残に破壊していく。


四元素砲の攻撃範囲は、エリシア帝国軍の二、三割くらいの範囲だが、派手な奇襲攻撃に全軍が狼狽えるのがみてわかる。さらに味方側は派手な先制攻撃が成功する光景をみて一気に盛り上がりをみせ士気が爆上がりしていた。


数では劣勢だが、この雰囲気なら勝てる、そう思っていられたのは短い時間であった。混乱しているエリシア帝国だったが指揮系統がしっかりしているのか、すぐに体制を立て直し攻撃態勢に移行した。倒れた仲間の魔導機など無視して、峠に布陣する連合軍へと前進を再開した。


さらに予想していなかったことが起こる。


「勇太! あれを見て!」


ファルマの声で前方を見る。それは驚くべき光景だった。なんと百機近い敵魔導機が空を飛んでこちらに向かって来ていたのだ。飛行する魔導機は珍しく、今までの戦いでみかけることもあまりなかったので、いつの間にか飛べるのは自分たちだけだと錯覚していたけど、確かに飛行が俺たちの専売特許なんて保証はどこにもなかった。


やばいな、地の利を利用して戦おうとしているのに、敵にあんな部隊がいるとなると有利な状況が弱くなる。


「ファルマ、あの飛行部隊を叩くぞ! あれを峠まで行かすと厄介だ」

「うん、わかった」


予定では味方に合流して防衛戦を手伝うつもりだったけど、あの飛行部隊は無視できない。地上はナナミとエミナに任せることにして、急遽、飛行部隊殲滅を優先することにした。


敵の飛行部隊も、空から強力な攻撃を放った俺たちに対して脅威を感じたのか、早急に排除しようとこちらに向かってくる。敵の飛行する機体の動きを見た感じ、飛行能力ではこちらが圧倒してそうだ。スピードもそれほど速くないし、小回りもあまりよくなさそうだ。しかし、油断はできない。なにより数が多いし、持っている武器が不気味だった。


「勇太、敵の機体が持ってる武器、みたことないよ、エミナが持ってるボウガンに似ているけど……」


敵の飛行部隊が装備している武器は剣や槍ではなく、両手で持つ大きなボウガンのような形状をしていた。しかし、アローなどの矢を装填するような仕組みがみえず、どうやって攻撃してくるか想像できない。


だけど、この謎は敵の行動ですぐに判明した。近づいてきた敵は俺たちの数十メートル手前の位置で一度停止する。そして、一斉に武器をこちらに向けて構えた。映画のガンアクションでみるような、ショットガンなどを発射するような敵魔導機の格好に嫌な予感した。


「ファルマ! 緊急上昇しろ!!」

ファルマは俺の声に反応して、ガルーダⅡをさらに上空へと向かって飛ばす。それと同時に敵の武器から赤い光が放出された。光はレーザービームのように直線に伸びて、俺たちに襲い掛かって来た。


「魔導光学兵器のようです。高出力のものならアルレオ弐の装甲でもダメージを受ける強力な武器です。回避を推奨します」


フェリがそう警告してくる。俺は見た目やばそうなので言われる前に避けていた。ガルーダⅡは脅威的な上昇加速でレーザーの照射を回避して、遥か上空へと逃れていた。超固いアルレオ弐の装甲にダメージを与えるような攻撃なので、装甲が比較的弱いガルーダⅡに直撃していたらどうなっていたのか……想像するだけで身震いした。

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