第441話 矢の雨

アルレオ弐とガルーダⅡは空高く上昇する。狙うはエリシア帝国軍の密集地点、そこに強力な範囲攻撃をお見舞いする。


「フェリ、表示した攻撃地点へ四元素砲を放った時の敵の被害を計算してくれ」

「はい、攻撃範囲内の魔導機は3000機ほどですが、大破できるのは1000機未満になるかと思われます。ライドキャリアへの影響は軽微で、撃沈数は20隻ほどに抑えられると予想されます」


今までの四元素砲の威力を考えたら思ったより効果が弱いように感じた。素直にフェリにそれを聞いた。

「ちょっと効果が弱いな、もしかして長距離飛行の影響か?」

「いえ、そうではありません。エリシア帝国軍の魔導機は、シールドを搭載した機体が多く、四元素砲の威力がかなり抑えられる為です」


「そうか、シールド搭載機がそんなにいるとなると、やっぱり油断できない相手だな」

「はい、エクスランダークラスの機体の反応もありますので、戦力は相当なものです。制御のある現状のアルレオ弐では苦戦することも考えられますので、いつものように馬鹿な力押しはなるべく控えて下さい」


ちくりと嫌味のように言われるが、思い当たる節はありまくりなので反論できない。

「それじゃどうしよう、もしかして四元素砲は使わない方がいいのか?」

「ガルーダⅡのアローレインとの波状攻撃を提案します。まずはアローレインの攻撃で広範囲の敵にシールドを展開させて、シールドのクールダウン時を狙って四元素砲を放てば、より効果的に敵を殲滅できます」

「なるほどな、ファルマ聞いてたか」

「うん、わかった。アローレインの発射準備をします」


強化されたガルーダⅡの性能をまだ見ていないので詳しくは知らないけど、アローレインは威力こそ四元素砲には及ばないが攻撃範囲は広いそうで、かなりインパクトのある攻撃だそうだ。それと四元素砲の波状攻撃なら、味方の士気をあげるには十分だろう。さらに最大限の損害を与えられのならやならない理由はない。


「ルーディア集中── エーテル充填── レーザーアロー具現化── アローレイン発射準備完了」


ファルマの妖精のように透き通った声が、攻撃準備を淡々と詠唱する。そして準備を完了すると、ガルーダⅡは斜め上に向かって持っているアローを構えた。


「アローレイン!!!」


ファルマの射った弓から十数本の光の矢が放たれた。光の矢は放たれてすぐに十数本に分裂する。さらに分裂した一本一本が十数本に分裂する。それをさらに4,5回繰り返して、光の矢は数えきれないくらいに増殖した。


空を埋め尽くした光の矢がエリシア帝国軍に雨のように降り注ぐ。しかし、エリシア帝国軍は今まで見たことないような反応をする。キュインキュインと妙な音を響かせて、いくつかの魔導機から光の輪が放出される。


光の輪に降り注ぐ光の矢が打ち消される。だけど光の矢の数が多すぎてすべてを打ち消すことはできない。三割くらいの光の矢は敵の魔導機に命中して、装甲に突き刺さる。


「敵魔導機のシールドがクールダウンに入りました。アルレオ弐はこれより四元素砲の発射準備へ移行します」


そう言ってフェリが四元素砲の発射準備を開始した。


敵の魔導機に展開しているシールドが点滅し始める。薄くなったシールドは次々に消えていく。ほとんどのシールドが消えたタイミングで発射準備は整った。


「ルーディアコア、アクセス──スペル『アグニ・グラディア』詠唱開始、スペル『アースタイタン』連結詠唱開始、スペル『シア・トリトーン』連結詠唱開始、スペル『ゼウス・ウェポン』連結詠唱開始──スペル『ヒロイックブースト』同時詠唱開始──範囲選択、位置補正、照準準備完了──四元素砲の発射準備が完了しました」


「四元素砲、発射!!」


クールダウンにより敵はもうシールドを展開できない。無防備な敵に向けて無慈悲な一撃が振り下ろされた。

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