第438話 合流

最初、本当にここが援軍との合流地点かと疑いたくなった。それほど誰もいなかった。しかし、待機していると、徐々に魔導機やライドキャリアなどが現れ始めた。


「援軍って、これだけかよ……」


最終的に援軍として集まったのは100機ほどの魔導機と十隻ほどのライドキャリアだった。とてもじゃないけど十分な戦力とはいえない。司令官もこれほど少ないとは思っていなかったようで、焦ったように各国に再度の援軍を要請していた。


「次にこの軍が敗北すれば、周辺の西方国家は滅亡するんですよ! 要人警護などに戦力を残さず、全てこちらに回してください!」


怒鳴り声をあげながら、激しくそう連絡する。確かに司令官の言うようにこの軍隊が、周辺国家にとっては最後の砦と言っても過言ではないと思う。出し惜しみせずに戦力を集めないといけないだろうけど、国家の偉い人たちはまだ自分の保身を考えているようだ。


「戦力といえば、そう言えば闘技場のあったアルペカも、この周辺の国家の一つなんだよな」

「うん。そうだよ」

ふと剣闘士として戦っていたコロシアムを思い出した。アリュナもそうだけど、剣闘士って下手な正規兵より強かったりするし、戦力になるんじゃないのかな……結構な数がいるし、援軍できてくれれば頼りになると思うんだけど。


そう思って、司令官に助言する。しかし、アルペカの剣闘士は自由人で、アルペカ政府と雇用や契約の繋がりがないから参戦の要請すらできないと返答された。もし、お願いするなら、剣闘士一人一人と交渉する必要があるそうで、今の時間がない状況では不可能だそうだ。


確かに剣闘士はみんな自由な連中だから、国の命令なんか聞くわけないかと納得した。だけど、それが尊敬する人物からのお願いだったらどうだろう……俺は伝説クラスの元剣闘士の王が仲間にいることを思い出した。


アリュナに通信で話をすると、すぐに剣闘士組織と掛け合ってくれた。そして剣闘士の王の名は今も健在だった。すぐに組織が動いてくれて所属する全ての剣闘士にその話が伝わった。そして、相手がエリシア帝国だということを伝えたうえで、それ相応の報酬を提示して希望者のみで即席の剣闘士軍が作られることになった。


敵は強大で命の保証のない戦いだ。命知らずの剣闘士たちでも参加する者は少ないと思われたが、全体の半数にもおよぶ数が集まることになった。どうやらエリシア帝国に支配されると、コロシアムは間違いなく解体され、自分たちの居場所がなくなると懸念していた者が多くいたようでその結果になったようだ。


まさかの話に連合軍の司令官は歓喜した。集まった剣闘士軍は魔導機二千機にもなり、現状の連合軍で最大戦力となった。その分、かなりの費用がかかるが、滅亡するよりは良いと各国から資金は調達された。



剣闘士軍が組織されたころ、エミナとナナミが到着した。ファルマはエミナとナナミにちゃんと怒られ反省の色を示す。


「ごめんなさい……」

「ファルマ、どんなことでも私には相談してよね。もう一人で突っ走たらダメだよ」

「うん、わかった」


これでエリシア帝国軍と戦う準備はできた。再度の援軍要請により、さらに数百機の魔導機が合流して、連合軍は数だけは三千機くらいの規模にまで回復した。しかし、情報ではエリシア帝国軍は一万機を超えるそうなので、これでもかなり劣勢なのは変わりない。質でも向こうが上だろうから、まともに戦っては勝ち目はないだろう。

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