第437話 売り込み

連合軍はエリシア帝国からは隠れながら撤退していたようだけど、空から探すと、フェリがすぐに見つけてくれた。


連合軍の魔導機は国家識別をするマーキングなどもバラバラで、寄せ集め感がいなめない。おばさんの話では最初は数千機規模の軍だったようだけど、パッと見て、数百機ほどまでに減少していた。一戦で全体の九割近くをやられたとしたら、かなり一方的な敗戦だったのだろう。それだけデアグラフル侯爵の裏切りが致命傷になったと想像できる。


俺たちを見た連合軍は最初は驚いて戦闘態勢に入ったが、おばさんが話を通していてくれたこともあり、なんとか司令官と交渉する場をもうけてもらえた。交渉と言っても連合軍に援軍を断る選択はなく、どれほどの報酬を支払うかの話になる。


「どれほどの力のある傭兵団か知らぬが、たった四機の援軍では、この額が精一杯だ」


提示された額は300万ゴルドと一般的な相場の金額で悪くはない。アムリア連邦やメルタリアの条件に比べたらあれだが、連合軍にとっては得体のしれない傭兵団に払えるのはこんなものだろう。そもそも今回の仕事は儲けるのが目的ではないので、どんな金額でも受けるつもりであったが、信用される為に傭兵らしい返答をした。


「契約金としてはそれで十分だ。しかし、成果報酬を設定してもらえるか? あのエリシア帝国を相手に戦うんだ。命の値段がそれでは仲間も納得しない」


なんとなくジャンが言いそうなセリフを想像して言ってみたんだけど、どうやら正解だったようだ。なにやら少し考えると連合軍の司令官は頷きながら成果報酬を約束してくれた。しかも欲深い傭兵と思ってくれたようで、傭兵として少しの信頼を得たようだ。今後の予定などを話してくれた。


「我々は援軍と合流後、反撃に転じる。ルダワンのデアグラフル侯爵の卑劣な裏切りで初戦はやられはしたが、今、各国政府が至急、兵力を集めている。まだまだ我々は戦えるはずだ」


そうは言うが具体的な数値を話すことはなかった。どれくらいの戦力が援軍でくるかはこの司令官にもわからないのではないかと感じた。もしかしたら本心では不安でしかたなく、想像を絶するほどの援軍が送られてくると願っているだけかもしれない。


援軍との合流地点はルダワンとメバロルの国境を面する場所で、エリシア帝国の追撃を警戒しながらゆっくりと移動する。道中、連合軍を観察していたけど、よほどこてんぱんにやられたのか、兵たちはみな、かなり憔悴していた。このままでは次の戦闘では戦いにもならず一方的に虐殺された終わりだろ。


「勇太、みんなすごく絶望してる。このままだと、私たちだけで戦うことになりそうよ」

ファルマも絶望のオーラに包まれた軍を見て、心配そうにそう言う。こんな状態の軍を復活されるのは至難の業だろう。確かにこのままだと俺たちだけで戦うことになりそうだ。


「やっぱり早めにエミナとナナミと合流しないとダメだな」

「二人は今、どの辺だろ」

「そんなに遠くじゃないだろ。援軍との合流地点もわかったし、二人に連絡して急いでもらおう」


二人はやはりもう近くまで来ていた。合流地点を伝えてなるべく急いできてくれと伝える。もう急いでいると文句を言いながらも、わかったと返答がきた。


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