第439話 作戦会議

エリシア軍が南下を開始したと情報がはいった。連合軍にはもう逃げ道はない。どこかでそれを迎え撃つしかない。その話し合いうをする為に作戦会議が開かれることになった。


剣闘士軍の件で、俺たち無双鉄騎団に対する信頼度が爆上がりしていたこともあり、司令官からその作戦会議への参加要請があった。ただの傭兵にそんな重要な会議に参加させるのもどうかと思ったけど、俺たちには俺たちの戦い方があるし、作戦会議でそれを伝えられるのは良いかもしれないと参加することにした。


一人では不安なので、エリシア軍のことをよく知っていて、基本的な戦術にも精通しているエミナにも一緒に会議に出てくれるようにお願いする。そんなのあたりまえでしょとばかりに彼女はそれを了承した。


「もちろん、私も参加します。勇太は実戦でこそ輝く存在ですからね。作戦会議で活躍するなんて想像もできません」


俺もそれには同感なので反論もできない。


作戦会議で最初に議題にあがったのは、戦場となるエリシア帝国軍を迎え撃つ場所でであった。数で劣る分、なるべく守りやすくこちらは攻めやすい地理的優位に立てる場所が望ましい。


この場所に関しては、どこかの国軍の将軍が最高の場所を提示した。


「ダイナモス峠に陣地を構えるのがよろしいでしょう。峠に近づくには狭く入り組んだ渓谷を通る必要があり、敵は選択の余地もなく戦力を分散されます。さらに高低差により、こちらからは丸見えですが敵側からはこちらの様子を探るのも困難となるでしょう」


この場所に関しては、会議に集まった全員が賛成した。それほど地理的には優位に立てる場所のようだ。しかし、一つだけ懸念点が示された。


「しかし、こんな我々に優位な場所に、エリシア軍はノコノコと攻め入ってくれますかね」


確かにそう思う。誰が見ても優位な場所だ。それはエリシア軍もすぐに気が付きそうなものだ。だけど、その疑問には元エリシア軍のエリートライダーが答えてくれた。


「その心配は無用でしょう。理由は二つあります。一つは戦力差がありすぎるということです。これほどの戦力差であれば敵は地理的優位をそれほど気にしないでしょう。もう一つはエリシア帝国軍の伝統的な方針にあります。力でねじ伏せる、政治的な意味も含めて帝国軍は自らの力を示そうとします。司令官によって個人差はありますが、どの司令官も伝統と方針に従い、圧倒的戦力でこちらを蹂躙してこようとするでしょう」


「なるほど……しかし、今の西方方面司令官は、最近、エリシア帝国にくだった新参者だと聞きますが大丈夫でしょうか?」


「新参者が帝国軍の方面軍の司令官になっているのですか!?」

エミナの知るエリシア帝国では考えられないことのようで、彼女は心底驚いている。


「はい、現在のエリシア帝国西方方面軍の司令官は十軍神の一人で、元メルタリア王国魔導機軍総司令官、クルスという人物です」


「メルタリアのクルスだって!!」


俺とエミナの声がハモる。確かにメルタリアにいたクルスという人物は知っている。あまり良い人間ではなかったように記憶しているが、まさかこんなところで名前がでてくるとは思って無かった。

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