第434話 私の敵/ファルマ

お父さんが私に隠していたお母さんの疑惑の死についておばさんからきいた。それは耳を塞ぎたくなるような内容だった。


お母さんは、とある夫人貴族のパーティーに呼ばれていた。夫人だけのパーティーだったのでお父さんは出席していなかった。お母さんは貴族同士の関係をあまりいい風に思って無かったのであまり乗り気ではなかったけど、貴族同士の付き合いはお父さんの仕事にも影響するので仕方なく参加していたということらしい。


しかし、そのパーティーで事件は起こった。パーティーの盛り上がりの半ば、お母さんは倒れた。そして救護も虚しく帰らぬ人となった。医者の話では突発性の発作ということだったけど、持病もなく、その日も元気だったのにいきなり倒れるなんて考えられない。お父さんもそう考えて裏でいろいろ情報を集めたそうだ。


パーティーの日、夫人貴族の集まりのはずなのに、お母さんとデアグラフル侯爵が話をしていたという情報、さらにお母さんをみとった医者は古くからデアグラフル侯爵家と繋がりのある家の出身であること、そしてパーティー会場になった夫人貴族の家の召使や料理人の数人がパーティー後に不審な死をとげたことなどの情報を得るが、決定的な証拠はでてこなかった。


お父さんやおばさん、さらにデアグラフル侯爵に否定的な貴族の多くは、お母さんはデアグラフル侯爵に毒殺されたと確信していた。だからずっとその証拠を得る為に調査していたそうだ。


「ベルファウストさんが死ぬ数日前に、私にもう少しでイベルマ姉さんの死の真相にたどり着きそうだと連絡があった、なのにあんなことになって……」


おばさんの言葉からさらに怖い想像をしてしまう。もしかして、お父さんが証拠を掴みそうだったからあんな暴挙にでたってことはないだろうか、そうだったらとても恐ろしいことだ。


「おばさんは国の偉い人にも繋がりがあったよね、今、デアグラフル侯爵がどこにいるかわからないかな」


「ファルマ、まさかあなた……」

おばさんは私の意図を悟ったのか心配そうな表情をする。


「やっぱりデアグラフル侯爵だけは許せない! お父さんと、もしかしたらお母さんも殺したかもしれないなんて……ねえ、おばさん、お願い! どこにいるか調べて!」

「私も姉さんの仇は許せないけど……姪のあんたまで何かあったらどうしたらいいか……」

「大丈夫、今の私は強いから負けない!」

「外にある魔導機かい? いくら魔導機を操れるようになったって、あんたはたった一人なんだよ。軍隊を動かすデアグラフル侯爵をどうやって倒すつもり?」


そうだ、今の私は一人っきり。無双鉄騎団どころか、勇太もナナミもいない。だけど、それでも私はお父さんとお母さんの仇を討ちたい。


「おばさんお願い! 私は一人でも戦える!」

「一人の貴方には絶対に教えられない。姪を心配しないおばがどこにいるの!」


おそらく人数の問題ではないと思うけど、売り言葉に買い言葉、私はこう言い返した。

「私にも仲間がいるよ! 今は一人だけど、ちゃんと信頼できる強い仲間たちがいっぱいいるんだから!」

「だったら仲間を頼りなさい。貴方が一人じゃないことがわかったら、私は全力で協力します」


そう言われ、私は仲間に連絡をすることを決断した。しかし、連絡が取れたとしても、エリシア帝国の侵攻は今にもはじまりそうだ。間に合うのか心配になる。


無双鉄騎団がいるアムリア連邦からここまではかなりの距離がある。ガルーダⅡみたいに飛んでこれるわけないので、かなりの時間が必要だろう。


飛んでやってこれる仲間、そう考えて、一番最初に勇太の顔が浮かんだ。しかし、勇太はアムリア連邦よりさらに遠いリュベル王国にいる。とてもじゃないけどアルレオ弐の飛行能力でもぱっとこれる距離じゃない。


でも……勇太なら、きっとどうにかしてくれるんじゃないかと根拠のない思いが浮かぶ。私は言霊箱すると、フガクではなくアルレオ弐に呼びかけた。


「ゆ……勇太……助けて」


アルレオ弐に乗っているとは限らないのに、迷いなくそう語り掛けていた。

「ファルマか!! どこにいるんだ!」

「今、ルダワンにいるの……」


すると勇太は私が想像もしていない返答をした。


「俺も、ルダワンにいるんだよ。ファルマはデアグラフル侯爵の屋敷の近くにいるんじゃないのか!?」


その勇太の言葉に驚き、そして心の底から安心した。そしてどうしてなのかわからないけど、涙が溢れ出していた。

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