第427話 重なるイベント

実はファルマが一人で飛び出したというのは、連絡の一つにすぎなかった。もう一つ重大な報告をアリュナは口にする。


「ファルマの件もそうだけど、さっき、もう一つ動きがあった。こちらも急ぎの要件だから話を聞いて」


「まだなにかあるのか」

ジャンもファルマが心配なのか、同時に起こっている別の問題に対して邪魔くさそうな反応をする。


「メルタリアから救援要請がきたの。契約もあるし、こちらもすぐに動かないといけないわね」

「えっ、メルタリアもエリシアに侵攻されてるのか!?」

エリシアの大規模な侵攻の話を聞いたので、俺はすぐにそう思ってきき直した。

「いえ、こちらは別件らしいわ。まあ、エリシア帝国の動きに合わせて周辺地域の紛争が過熱したようだけど」


「どこもかしこも戦争だらけだな、まあ、その方が傭兵の俺たちは儲かるわけだがな。わかった、確かにメルタリアの件もすぐに動かないとな」


メルタリアもかなり急ぎのようなので、同時に動く必要があるだろう。


「俺はさっきも言ったけど、ファルマを追ってルダワンに向かう。ジャンとアリュナはすぐに合流してメルタリアに向かってくれるか」


状況を考えると、下手をするとエリシアとルダワンの二国を同時に相手にする可能性もある。本当は無双鉄騎団全員で向かいたいところだけど、メルタリアも放っておくわけにはいかないのでそれしかないと思った。


「くっ、それしかねえか……また、勇太に無茶させるかもしれないな」

「それは構わないよ。正直言うと、俺の気持ちは飛び出したファルマと似たようなものだ。仇をエリシア帝国なんかに取られたらたまったもんじゃない」


そろそろ仇を討てる力をつけたと思っていた矢先の話だ。そもそも俺やファルマたちが傭兵になった目的はそこにある。ルダワンに、ベルファウストさんの死の責任を取らせるまでは、滅亡なんてさせるわけにはいかない。


仲間にアリュナからの連絡を伝えると、やはりと言うかリンネカルロが強い反応を示す。


「わ、私も勇太についていきますわ!」


確かにヴィクトゥルフならアルレオ弐にもついてこれるかもしれない。だけど、問題はそこにはなかった。


「いや、それはダメだ。メルタリアの件は複雑な政治判断が求められる可能性がある。合理的に考えて無双鉄騎団の団員であり、王族であるリンネカルロはメルタリアにいった方がいいだろう」

「そっ、それはそうかもしれませんけど、最悪、ファルマと勇太の二人でエリシア帝国とルダワンを相手に戦いになるかもしれないですわよ。いくらなんでもそれは無茶ですわ!」


「いや、エミナとナナミもファルマを追ってルダワンに向かってるから、二人ってことにはならないよ。確かにリンネカルロが一緒に来てくれた方が心強いけど、契約国でもあり、リンネカルロの母国であるメルタリアも大事だしな」


「ですけど……」


リンネカルロはそれ以上は反論できなくなった。母国が心配なのは間違いないし、正論に押し負けた感じだ。


アリュナの話だとメルタリアの方もかなり大きな戦いになりそうな感じだそうだ。しかし、オヤジやリンネカルロ、清音が合流するからあまり心配はしなくても大丈夫だろ。

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