第426話 緊急の連絡

「勇太!!!! どぉうしてて~ ひっくっ……貴方はそんななの~~ もっとこう、ちゃんとしないとダメでしょ!!」


妙なテンションで渚が唐突に俺にからんできた。顔は赤く、フラフラしているのを見ると、完全に酔っぱらっているのがわかる。幼馴染みで常に一緒にいたから、渚の色々な表情や仕草を知っているが、こんな姿を見るのは初めてだ。


「お~い。誰だ、渚にこんなに酒飲ませたの!?」


犯人を捜そうとそう聞いた。すると酔っ払い親子とリンネカルロがばつが悪そうに目をそらす。どうやら寄ってたかって、初めて酒を飲む渚を面白がって飲ませたようだ。渚の父親は職業柄なのか性格なのかあまりお酒は飲まないのだが、母親はうちのかあちゃんと同じで底なしの酒豪だ。その血も引いているので酒が嫌いなわけがない。


「はいはいはい!! 私、自分で飲みました!! ほら、勇太も一緒に飲もうよ~! ほら、私がついであげるから~」


はいはいわかったわかったとウザい酔っ払い幼馴染みをいなしながら、犯人たちを睨みつける。オヤジたちもまさかそんな乱れるとは思ってなかったようで、すまんすまんと謝る仕草はするが、後は宜しくと丸投げ感はいなめない。


しかし、そんな宴会の盛り上がりが最高潮にの時、酔っ払いの幼馴染みの相手をしている場合じゃない事態が訪れた。


顔色を変えたジャンが俺を呼ぶ。仕事の顔、しかもあまりよくない時の表情だったので、俺もすぐに宴会モードから抜け出してジャンに応えた。


「どうしたんだ、ジャン、そんな怖い顔して」

「今、アリュナから緊急の連絡があった。ちょっと来てくれるか」


どうやらアリュナからの連絡があったようだ。宴会を邪魔しないようにジャンが密かに受けたようだけど、内容から俺にすぐ伝えた方がいいと思ったようだ。


俺とジャンはすぐに言霊箱のあるブリッジにいき、アリュナの話を聞いた。


「すまない、勇太、私がいるのにこんなことになってしまって……」


アリュナの話は謝罪から始まった。話を聞いていると、その内容にどんどん不安になっていく。


「ファルマが一人で飛び出しただって!! ちょっと待て! どうして止めなかったんだよ!」


「気が付いた時にはもう魔導機に乗り込んじまったんだよ。今のガルーダはラフシャルの改造と、ファルマの成長によって高速飛行ができるようになっているから、こちらのメンツじゃ誰も追いつけやしない。言霊箱で呼びかけたけど、心配しないでって言うだけで止まりはしなかった」


「くっ……わかった。急いで帰る……いや、俺は直接、アルレオ弐でルダワンに向かう」


ルダワンにはナナミとファルマと生活した楽しい思い出でと、恩人であるベルファストさんの死という悲しいできごとがあった場所だ。


アリュナの話によると、あのエリシア帝国が突如本格的に他国に侵攻を開始したというニュースが飛び込んできたそうだ。ルダワン近辺に、本気になったエリシア軍を止めれる国などありはしないそうで、ルダワンをはじめとする周辺国家は滅亡するのも時間の問題であるという記事であった。


その記事を見たファルマは仇である国が無くなるのを知って飛び出した。俺たちが帰るのを待てとアリュナたちは説得したけど、隙をみてガルーダに乗り込んで一人で出てしまった。


エミナとナナミにファルマを追いかけさせているそうだけど、足の速さでガルーダに追いつけるわけもないので、おそらく二人ともルダワンまで追いかけることになるだろう。


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