第419話 宴の準備
俺とオヤジと清音は酒の買い出し、ジャンとリンネカルロとイプシロンコアの数人は衣服や生活用品を買いにいくことになった。他に渚とマウユ、それにエミッツとミルティーはマウユの身の回りのものや、その他必要になりそうなものを担当する。ミライにはフェリが残り留守番をしてくれるので安心して出かけた。
立ち寄った町は名前も良く知らない小さな町だけど、ある程度の賑わいもあり、市場も小規模ならが存在した。小さな市場なので少しウロウロしただけで、酒を取り扱っている店はすぐに見つかった。そこはちゃんとした酒屋のようで、オヤジ曰く、品ぞろえも悪くないとのことだ。
「そこの棚のを端から端まで貰おうか」
オヤジは豪快に十本くらいを一気に購入する。それを見て清音が何時もの如く、小言を浴びせかける。
「父上、もう少し吟味して選んではどうですか? しかも高いお酒ばかり……どうせどんなお酒も水のように飲むのですから、こちらの安い物で十分じゃないのですか」
「失礼な奴だな。水のように飲んでるように見えるが、ちゃんと味わってるわい」
「そうは思えません。前にお気に入りの地酒を切らした時、父上には内緒で適当なお酒をお出ししましたが、気付かず、美味い、やはりこいつにかぎるな~と、言って美味しそうに飲んでたじゃありませんか」
「なんだと! お前そんなことしてたのか!」
「そんなことしてました。だからほら、そのお酒は棚に戻して、こっちにしてください」
「くっ……本当にどんどん母さんに似てくるよな」
天下無双の剣聖も、娘の清音にかなわないようで、渋々とお酒を棚に戻そうとした。
「その酒、戻さなくていいよ。今日は特別に俺の奢りだ。久しぶりのお酒だろ? 飲みたい酒を選べばいいよ」
「ほんとうにいいのか勇太!」
それを聞いたオヤジはパッと明るい表情になって喜んでいる。特に欲しい物もなく、生活費のほとんどは無双鉄騎団からでているので、実は給与のほとんどが手つかずでいい金額の貯金ができている。こんな時にしか使う機会もないし、親孝行に使うのもわるくないだろう。
「またそうやって甘やかして……」
「いいから、いいから、清音も飲みたいお酒があったら買っていいよ」
「本当に?」
オヤジの酒好きに隠れてあまり目立たないが清音も十分にお酒が好きなことは知っている。ここはついでといってはなんだがそう提案した。
「いつも世話になってるからな、弟からのプレゼントだ」
そう言うと清音は、オヤジに小言をいう手前抑えていただけで、すでに飲みたいお酒を見繕っていたようだ。さっと考えることもなく数本のお酒を選んだ。
「勇太……もう一本だけ選んでいい?」
清音には珍しく甘えるようにそう訴えてくる。彼女の普段見られないそんな表情を見られただけで、完全に元は取れている。俺は快く快諾する。
なんとも仲睦まじくお酒を選ぶ二人の姿を見ているだけ嬉しくなる。家族孝行しているんだなと実感すると、新しくできた妹の存在を思い出す。そして幼少から家族同然で育った幼馴染みのことも頭に浮かんだ。
そうだな、あの二人にも何か買っていってやるか……。
何気なく何を買うのか考えていると、遠慮を知らない二人の酒豪が予想より少し多い酒を抱えてこちらへやって戻ってくるところであった。
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