第402話 精神接続

オヤジは生き返ったが、すぐに覚醒させるのは危険と言う事で、もうしばらく医療ポッドで休ませることになった。すぐに話せると思っていたのでちょっとだけ残念だ。


「次はあの女の子の治療を考えましょう」

「治せそうか?」

「安心してください、これだけの設備があればどうにかなるはずです」


フェリが設備の機材を見ながらイプシロンコアの女の子の治療案を考える。少しの間で何かのプランを思いついたのかこう言ってきた。


「勇太、少し手伝って貰えますか?」

「もちろん、俺にできることなら何でも言ってくれ」


フェリの思いついた治療法は、彼女の精神に直接アクセスして傷ついたアストラルソウルを癒すというものだった。そして俺に与えられた任務は癒しのプログラムとやらを届けることらしい。


「本当に俺で大丈夫か?」

俺がカプセルと彼女の医療ポッドになにやら配線を繋いでいるフェリにそう再確認する。


「はい、勇太が最適でしょう。彼女との前の戦闘で、少しですが心の繋がりがありましたので、精神へのアクセスにおいて必要以上の負荷を与えないと思います」


よくわからないけど、フェリが言うなら正しいのだろう。俺が適任だというならやるしかない。


「勇太、女の子の心と繋がるんだから、デリカシーのないことしちゃダメよ」

フェリから治療手順を聞いた渚が、内容に心配になったのかそう念を押してきた。


「繋がるったって、癒しのプログラムの仲介をするだけなんだろ? 何か行動するわけでもないだろうから大丈夫だと思うぞ」

「それでもなにかやらかしそうで心配なの」


小さいころからの行動を知っているだけに、悪い意味で信頼しているようだ。そんなに変なことをしてた自覚はあまりないのだけど……。


どうやら機器の接続が終わったようだ。フェリから最終確認が言い渡される。


「彼女の治療はプログラムがおこなってくれます。勇太は特に何もしなくても大丈夫ですから、何が起こっても静止していてください」

「何か起こるのか?」

「精神世界を完全にコントロールするのは難しいです。ですから不測の事態が起こる可能性はあります」

「不測の事態が起こっても何もしないでじっとしているのか!?」

「はい。何かあってもこちらで対応します。変に勇太が動くと、コントロールが難しくなってさらに状況が悪化するおそれがあります。ですので、じっとしていてくれると助かります」

「わかった。何もしないように頑張ってみる」


よく考えたら何もしないように頑張るとはよくわからないけど、大真面目にそう言っていた。


「それでは接続します」


その言葉を聞いて数秒で視界が暗くなっていく。急速に眠りにつく感じになるけど、不思議な事に意識ははっきりしていた。


それから真っ暗な空に向かって飛び立つような感覚で浮遊感を感じる。暗くて見えるわけではないが、どこかに向かっていた。


やがて白い点が見えてきた。そこが目的地だというのはすぐに理解した。白い点は、近づくにつれて大きな光の塊だということに気が付く。どうやらその中に入っていくようだ。


光の塊に触れた瞬間、バチバチと衝撃が走る。そして視界が真っ白に飛んでいき、同時に意識も失われていった──

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