第397話 巨獣の行動

尾の付け根を狙った渾身の一撃は、巨獣の下半身を吹き飛ばした。巨獣は真っ二つになり、上半身は転がり落ちる。


「まだです! 巨獣は生きています!」


下半身を飛ばして油断していた俺にフェリが叫ぶ。見ると、確かに上半身はまだ動いている。ウニョウニョと動きながら逃げようとしている。


「逃がすか!」


高速飛行で追いかけようとした。しかし、途中で急激に失速する。そしてそのままフラフラと落下してしまう。


「エーテルが枯渇しました。エーテルポッドを使用して急速回復します」

「ウソだろ、もう少しで倒せるのに!」


エーテルの枯渇で飛行することもできなくなった。急速回復中は行動に制限があるので、追いかけることもできない。その間に巨獣は中央のドーム型の建物へ向かって逃げていく。さらに恐ろしいのは、逃げている間にも無くなった下半身の再生が始まっていることであった。


「フェリ! どれくらいで回復できる!?」

「後、5分ほどで全力行動できる最低値の50%までは回復します」

「5分もかかるのか!」


それでも自然回復ではエーテル濃度によって変化はあるが数か月はかかる。それを半分とはいえ、数分でおこなえるエーテルポッドに文句も言えない。


急速回復中は飛行できない。歩いて巨獣を追いかけるが、まったく追いつけそうにない。


どういうわけか巨獣は中央の建物を破壊しながら中に入っていく。逃亡するにももっと逃げる道があると思うのだけど、閉鎖された場所を選択したようだ。



「50%まで回復しました。早く巨獣を追いかけましょう! このまま再生されては厄介です!」

「よし!」


まってましたとばかりに高速飛行で巨獣を追いかけて、中央の建物へ向かって飛ぶ。逃げたルートは破壊されているので追うのは苦労しなかった。


巨獣は建物の地下を目指して床を破壊していた。下半身はすでに半分ほどが再生されている。


「勇太! あそこは爆発物のあるエリアです。高確率でジャンたちがいますので、攻撃前に状況を確認した方がいいです」

「マジか! また厄介な場所へ逃げたな……」


不用意に攻撃できなくなった。仕方ないので巨獣への攻撃を一度諦め、回り込んで地下へと向かう。


地下で最初に目についたのは、リンネカルロのヴィクトゥルフが三体のガーディアンと戦闘している姿であった。三対一ではあるが、リンネカルロの方が優勢のようで、三体のガーディアンのうち二体はすでに動くのがやっとなくらいに痛めつけられている。


「リンネカルロ!」


助けなくてもリンネカルロなら倒すのは時間の問題だとは思ったけど、これから巨獣との戦いの続きが始まることを考えると早めに排除した方がよいと判断した。俺は三体で一番元気なガーディアンとの間合いをつめると、すでに発現させていたオーラソードで真っ二つに両断した。


新たな敵の出現にガーディアンたちが混乱する。リンネカルロはその隙を逃さなかった。


「ライトニングボルト!!」


ヴィクトゥルフから生み出された無数の稲光が二体のガーディアンに襲い掛かる。見た目からかなりの回避能力のありそうなガーディアンたちだったが、隙をつかれてはさすがに避けるのは無理だったようだ。直撃したガーディアンたちは白い煙をあげてぶっ倒れた。


「勇太! 巨獣は倒したのですの!?」

ガーディアンを倒して落ち着いたリンネカルロが状況を聞いてくる。


「まだ、倒せてない。こっちに逃げてきたから追いかけてきたんだ」


そう言った瞬間、奥の天井が崩れ落ちて巨獣が顔を出した。よく見ると、最悪なことに、その場所の下にジャンたちの姿が見えた。

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