第396話 もう一つの危機/ジャン
慣れない作業と、見慣れない部品の数々に苦戦しながらも、なんとか箱型の機器を取り外すことに成功した。
「とったぞ! 次はどうするんだ!?」
「次は起爆装置を取り除こう。メーターがある箱を外すけど、そこには爆発のトリガーになる措置があるからより慎重におこなう必要がある。まずは構造を見て、取り外しの手順を考えよう。メーターの箱をあまり振動を与えないで開けてみてくれ」
そんなふうに言われると妙に緊張する。少し震えながらメーターのある箱のカバーを外す。中には無数のコードがあり、何が何やらわからない。こんなのどうやって通信で伝えればいいんだ!?
「ラフシャル、箱を開けたけど、複雑すぎて説明もできないぞ!」
「大丈夫、複雑に見えるけど、そのほとんどはダミーの配線なんだ。重要な配線は一つだけ、爆発物に繋がっている配線を見つければいいだけさ」
「いいだけさっ、て軽く言うけど、どうやって見つければいいんだ!」
「いくつかの構造パターンがあって、それを追っていけばいいんだけど……中々通信で伝えるのは難しいな、フェリは近くにいないのか?」
「いま、アルレオ弐で強力な巨獣と戦闘中だ」
「そうか、じゃあ、めんどくさいけど一つづつ確認しながら追っていこう」
ラフシャルは強力な巨獣とアルレオ弐が戦っていると聞いても少しも動揺していないようだ。それほどアルレオ弐と勇太、そしてフェリを信頼しているってことなのだろう。
ラフシャルが言うように、通信で爆発物の解体の説明を受けるのは難しかった。配線の状況を細かく伝え、それに対してラフシャルがいくつかのチェック項目をこちらに投げて、さらにその結果を受けて指示がでる。それを何度か繰り返して起爆装置の構造を解析していった。
「よし、後は上の赤い回線を切れば起爆装置と爆発物の繋がりを外せる」
指示通り赤い回線をパチッと切り、作業を完了させる。それを伝えると、ラフシャルも安堵したようにこう言った。
「よかった。これで時限で爆発することはなくなった」
それを聞いて俺も安堵したが、それを全否定するように、あの男の声が聞こえてくる。
「まさかそいつを解除できる技術者がいるとは大変な誤算だったよ」
それはここの主であるデミウルゴスの声だった。外部出力音のような声で、どこから発せられているものかはわからなかった。俺は声のもとを探して周りを見渡す。そしてガラス張りのテラスルームに人影を見つけた。
「しかし、起爆装置を解除するのが限界のようだな。安心してくれたまえ、その爆発物はそんなものがなくても爆発させることが可能だ」
「なんだと! どういことだ!?」
「ふっ、まあ、あの世に行く人間に説明するのも無駄だろうが、教えてやろう。その中心の液体は熱や衝撃で爆発するのだよ。起爆装置はそれを誘発するだけのものなんだ。外部から強い力を加えるだけでいい。単純な事だ」
そう言い終わると、天井部分が大きく崩れた。そして凶悪な頭部が顔を出す。
「巨獣!!」
それはアルレオ弐と戦っているはずの巨獣だった。どういうことだ!?
「私が爆発物を爆破させる為にここに呼んだ。そいつと戦っていた魔導機も核融合液が爆発すれば消滅することになるだろうから、手っ取り早い方法だろう」
その言葉を聞いて少し安心する。勇太は、アルレオ弐は倒されたわけではないようだ。
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