第393話 オーラソード
青白いオーラで巨大化した剣は巨獣の強固な皮膚を難なく切り裂く。しかも大きく広がった刀身により、巨獣は無視できないほどのダメージを受けたようだ。巨獣は肩の部分がパックリと切られ、痛みなのか、危機回避なのか、激しく暴れ始めた。
がむしゃらに暴れる巨獣から上昇して一時離れる。怒りで我を忘れているのかと思ったのだが以外に冷静で、上昇したアルレオ弐に向けてブレスを放つ。
感覚的に斬れると思った。俺はブレスを避けることなく、オーラソードで斬り伏せぐ。
ブルーのオーラとブレスの光が衝突すると、線香花火のような火花が散る。そして俺の予想した感覚の通り、オーラソードはブレスをねじ伏せ散り飛ばした。
「オーラの物理的高圧縮……ラフシャルが昔から研究していたのは知っていましたが、まさかここまで実用レベルに完成させていたとは驚きです」
フェリは同じ研究者として驚いていると同時に、軽く嫉妬しているようにも感じた。
巨獣はさらにブレスを放ってきた。冷静に見ると、ブレスを放っている時の巨獣は隙だらけである。
巨獣に向かって一気に加速する。超高速飛行にはかなりのエーテルを消費するが、ここは勝負時だと判断した。放ってきたブレスをジグザグに避けて間合いを詰めると胴体を斬りつける。
大きく胸が切り裂かれ、何とも言えない色の液体が吹き上がる。どうやら液体は巨獣の血液のようだ。
血しぶきをあげた巨獣は空に吠える。そして何やら様子がおかしくなった。何度も上を向いて咆哮をあげて興奮しているようにも見える。
「どうやら巨獣が本気になるようです。気を付けて下さい。かつて数万のライダーを血祭りにあげた、SSSクラス巨獣の本領が発揮されます」
「今まで本気じゃなかったのかよ!」
「生物としての生存本能です。危機的状況で潜在能力の全てが引き出されます」
フェリの言うように巨獣は怪物から獣へと変貌した。フーフーと妙な息遣いになり、こちらを見る目つきが変わる。筋肉が膨張していき、体が一回り大きくなったように見える。そして、一睨みすると上空にいるアルレオ弐に向かって飛んだ。
飛んだと言うよりジャンプしたのだが、その跳躍力が凄まじい。一気に接近されてしまった。
「はやい!」
巨獣は接近すると、膨張した腕を振って鋭い爪で斬りつけてきた。とっさにオーラソードでその爪を跳ね返す。しかし、凄まじいパワーで、アルレオ弐も反動で後退させられる。
かなりの攻撃力だが、アルレオ弐も負けてはいない。オーラソードで跳ね返した爪は無残に破壊されていた。
「ブレスきます!」
爪を壊されてさらに怒りに狂ったのか、巨獣はブレスを放ってくるようだ。本気になった巨獣の至近距離からのブレス攻撃は、さきほどまでと同じ威力と考えるのは危険だと感じた。
「シールド全開!! 防御フィールド急展開!」
さっきまでとは比べ物にならないほどのブレス攻撃だった。渦巻く熱線は逃げ場のないほどの大きな塊となって襲い掛かってくる。しかし、それでも今のアルレオ弐の防御性能の方が上であった。ブレスの白い光はアルレオ弐の前で四散して空中に巻き散る。
飛んでいるわけではないので巨獣はブレスを放った後、落下していく。俺は加速してそれを追った。ブレス後の巨獣は隙だらけだ。今、弱点である頭部を攻撃すれば仕留められそうだった。しかし、頭部にあるイプシロンコアの中にいる人を見てその選択は捨てることにした。
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