第392話 侵入/ジャン
念のために工具とは別に、ミライに設置してある言霊箱をひっぺがして背中に担いだ。これで通信は使える。いざとなったらフェリに爆発物の解除の知恵を借りるつもりだ。
「リンネカルロ! 建物の扉を壊してくれ!」
悠長に鍵をこじ開けて侵入している暇はない。強引だがヴィクトゥルフで破壊してもらうことにした。俺の考えを理解しているのか、リンネカルロはためらうこともなく扉を破壊する。
すぐに壊れた扉の部分から建物へと侵入する。中は無人のようで、人の気配はない。
「爆発物はこの建物の下部にあるはずだ。下に続く階段か何かないか!?」
扉を開いたりして階段を探すが見つからない。破壊した扉の入り口を狭そうにしながら入ってきたリンネカルロが、俺の言葉を聞いて提案する。
「ジャン、ヴィクトゥルフで床を破壊するってのはどうですの」
無茶な提案だがそれが一番早いかもしれない。しかし、この施設の設備は後で使用する予定もあるから、あまり破壊すると後々困るだろう。
「この施設の設備は使う予定だからダメだ。絶対にどこかに下へ行くルートがあるはずだから探そう」
しばらく探し回り、ようやく頑丈そうなシャッターを見つけた。位置的にここから下にいける可能性は高そうだ。だが、シャッターの開け方がわからない。ここはヴィクトゥルフにお願いするしかないようだ。
「リンネカルロ、このシャッターをこじ開けてくれ」
「わかりましたわ」
ヴィクトゥルフはシャッターの下に強引に指を入れて思いっきり持ち上げた。メキメキと音を立ててシャッターは変形しながら開かれる。
「よし、予想通り下へ続く通路だ」
「ここならなんとか魔導機も通れそうですわね」
確かに魔導機で資材を運ぶ為の通路のようで、それくらいの広さはある。俺たちはヴィクトゥルフを先頭にその通路を先に進んだ。
通路の先は広い空間になっていて、中央に大きな柱が伸びていた。おそらくあれがこの施設の支柱だろう。支柱の周りには魔導機一つ分くらいの大きさのゴツゴツした物体が張り付いていた。
「あれが爆弾だな」
「ジャン殿、なにやら近づいてきます!」
やはりすんなりと爆発物の解除はさせてくれそうになかった。ガーディアンだと思われる四足歩行の魔導機が三体現れた。
「あれは私に任せるですわ! ジャンは爆発物の方に集中すればよいですわ」
「頼んだぞリンネカルロ!」
ガーディアンも生身の人間より、魔導機のヴィクトゥルフを敵として認識したのか、三体ともヴィクトゥルフの方に注意を向けている。俺とエミッツとミルティーはその間に爆発物へと近づく。
しかし、対人用の備えもあったようだ。シャカシャカと音をたてて車輪の付いた妙なのがこちらに向かってきた。
「ちっ、小型のガーディアンか……」
「あれは自分とミルティーが抑えます。その間に爆発物を!」
「すまねえ、エミッツ、ミルティー。頼む」
そう言うと二人は頷いて剣を持ち、小型のガーディアンと対峙する。
その間に俺は爆発物に近づいた。
まずは構造を確認しねえとな……俺は工具を使って爆発物の表面を取り外そうとした。だが、どうも持ってきた工具と規格がかなり違うようでなかなかうまくいかない。
ちっ、強引に外したら爆発するかもしれねえ……。
イライラしながらもなんとか爆発物の一部の部品を取り外すことができた。そして中を見て唖然とする。
やべ……まったくわからねえ。
細かい作りどころか、どういう理屈で爆発するのかもわからない。俺の額を大粒の汗が伝っていく……。
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