第390話 恐怖

かなりの衝撃だったけど、シールドと耐衝撃のおかげで機体へのダメージは軽微ですんだ。フェリの素早い対応に感謝しながら、次の一手を考える。


腹に剣を刺した感じだと、あの程度ではほとんどダメージを受けてないように思う。このまま剣で攻撃をし続けても、倒すのは困難だろう。しかし、そう言っても四元素砲などの火力の強力な攻撃では、頭部にあるイプシロンコアを破壊する可能性もあるし、下手すれば爆発前に施設が崩れてしまう可能性もある。


「フェリ、どうすればいいかな……あの怪物にどうしたら勝てる!?」


いくら考えても良い案が思い浮かばない。気弱になった俺は博学なフェリの知恵を借りようと助言を乞う。


「勇太、今の貴方はアルレオ弐の性能の20%も発揮させていません。もしかして、あの巨獣を恐れているのではありませんか?」


そう言われてハッとなる。確かにこれほど巨大な怪物なんて、映画の中でしか見たことが無い。以前に戦った巨獣や、巨獣兵器も迫力があって恐怖を感じたが、これほど絶望感のある感覚にはならなかった。


いくら強くても、想像の範囲内の相手には恐れることは少ない。しかし、それまで想像もしていなかったような未知の相手となると、必要以上に恐怖を感じるものだ……昔、そんな話を渚のオヤジが言ってたのを思い出す。確かに、こんな巨獣が実在するなんて、想像もしていなかった。


自覚はなかったけど、どうやら俺はこの巨獣に恐怖を感じていたようだ。大きさのインパクトと、風貌が昔みた映画に出てきていた恐怖を振りまく怪物に似ていたからかもしれない。


よし、現状は把握した。俺は必要以上の恐怖に委縮していた。だけど恐れる必要はない。クラス2専用機のこのアルレオ弐の力ならあの怪物にも勝てるはずだ。


アルレオ弐を追いかけて攻撃を繰り返していた巨獣が不意に上を見上げた。また咆哮を繰り出すと思ったけど違った。巨獣は前かがみになり、りきむような格好をする。すると、巨獣の周りに青白い稲光が発生した。それはバチバチと放電しはじめて大きく広がる。


放電の範囲の広がりが早くアルレオ弐に直撃する。しかし、かなりの威力だと思うその攻撃を、アルレオ弐は弾き返した。


「勇太、その調子です。さきほどよりルーディアの集中力があがり、シールドの出力がアップしています」


もっと集中しろ。まだまだ強くなれる。アルレオ弐の力はこんなものじゃないはずだ。俺はアルレオ弐に、そして俺自身にそう言い聞かせるように念じる。


巨獣が放電では倒せないと思ったのか、また物理攻撃に切り替えてきた。巨体を揺らしながら近づいてくると、大きな尻尾を振り回して攻撃してくる。


少し冷静になったからか、その動きが良く見える。紙一重で尻尾の攻撃を避けると、もう一度剣で攻撃する為に巨獣に接近した。


早く鋭く! もっと強く! 握りしめる剣に気合を注入するように力をこめる。すると、その気持ちが剣に伝わったのか、青白いオーラが剣を包み込むように現れる。


「自動エンチャント発動! 自己ブースト発現! どうやらラフシャルの仕掛けた隠しギミックのようです」


色々仕掛けがあるんだ……アルレオ弐のお披露目の時、そう笑顔で言っていたラフシャルの顔を思い出す。どういう機能かはわからないけど、なんとなく攻撃力があがったように思う。よし、これなら……。


俺は青白いオーラに包まれ、刀身が倍以上に大きくなったように見える剣を振りかぶり、巨獣を斬りつけた。

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