第389話 怪物

巨獣が近づくアルレオ弐に向けて、咆哮をあげる。強烈な音の暴力が襲い掛かってくる。しかし、さっきほど食らった時ほどの重圧はない。


「アルレオ弐の外部音を遮断しました。外部からの音が聞こえなくなりましたので、視覚で相手の動きを判断してください」


確かにいつもより静かになった。音などで敵の動きを察知することもあるのでちょっと戦いにくいかもしれないけど、あの咆哮に対抗するには仕方ないかもしれない。


巨獣がアルレオ弐に向かって動く。尻尾の部分を大きくスイングして叩きつけてきた。豪快な動きの割には早く避けきれない。足に接触した瞬間、重い衝撃を感じた。


「くっ! なんて速さだよ!」

バランスを崩しそうになるが、なんとか立て直す。しかし、巨獣の猛攻は終わらない。さらに振り戻しで尻尾で攻撃してきた。


「勇太! 上に逃げて下さい!」


横振りの攻撃に対して逃げ場がない。フェリの言うように緊急上昇で回避する。


上昇して逃げたアルレオ弐に対して巨獣が追撃してくる。大きく口を開けてブレスが放たれた。破壊をもたらす熱光線が襲い掛かる。


旋回しながらそれを避けるが、熱光線から放射されている高温の帯に触れる。それによりアルレオ弐の足の部品の一部が少し溶けた。


直撃は避けないとヤバイな……。


旋回しながら接近する隙を伺う。巨獣はアルレオ弐の動きに合わせて頭を向けて威嚇してくる。不意に接近したらブレス攻撃の餌食になるだろう。なんとか気をそらせればいいのだけど方法が思いつかない。


「フェリ、なんとか巨獣に隙を作れないか」

「分析していましたが、あの巨獣はどうやら視力がよくないようです。音と熱に反応している節があります。それを利用しましょう」

「どうするんだ?」

「まずは巨獣の真上にいってください」


フェリの言うように巨獣の真上へと飛行する。巨獣はそれを追って見上げた。


「今です! クエイクボムを投下してください」


クエイクボムとは地雷のような兵器で、アルレオ弐の腰に二個付けられている。こんなの使う機会ないだろうと思ってたけど、今がその使う時らしい。俺は言われるままにクエイクボムを投下した。


「魔光弾でクエイクボムを撃ってください。ボムを破壊したら、すぐに旋回して敵に接近しましょう」


なるほど、ようやくフェリの意図がわかった。俺は魔光弾を連射して落下するクエイクボムを破壊した。爆音と爆炎を轟かせて大きな爆発が起こる。もちろんこんな攻撃では巨獣にダメージなど与えられないが、音と熱に反応する巨獣は爆発に注意が集中する。


爆発に注意がいっているうちに、俺は回り込んで、巨獣の懐へと飛び込んだ。


よし、うまくいった。巨獣は俺の接近に気が付いてないようだ。


旋回して勢いをつけたまま、剣で巨獣の腹を狙って突き刺す。ぐさりと剣が腹に食い込む。しかし、そこから剣はピクリとも動かなくなった。抜きも刺さりもしない。


この攻撃で巨獣もアルレオ弐の接近に気付いたようだ。剣を突き刺したまま激しく動き回る。その動きに振り回されるが、剣を持つ手を離さないように強く握る。


このままでは剣だけ持っていかれそうなので、引き抜いて離脱することにした。剣を両手でしっかり持って、巨獣の体に足をつけて思いっきり剣を引き抜く。


しかし、体から離れたところを狙われた。巨獣はアルレオ弐に向かって、大きな口を広げて、その鋭い牙で噛みついてきた。


あんなのに嚙みつかれたら無事ではすまない。きりもみしながら必死で回避する。牙からはなんとか逃れることができたが、巨獣は尻尾を使って連続攻撃を繰り出してきた。タイミング的にこれは避けようがない。


「シールド展開! 耐衝撃システム始動!」

ヤバイと思った時、フェリの声が響いた。そして次の瞬間、強烈な衝撃を感じる。アルレオ弐は大きく吹き飛ばされた。

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