第388話 咆哮
「私も残って戦いますわ!」
リンネカルロがまたわがままを言い始める。
「ダメだ、リンネカルロ! 爆破を阻止しないとどっちみちみんな死ぬし、そっちも大事だ!」
「ですけど……」
「いいから、いってくれ!」
まだ何か言いたそうだったが、渚が間に入る。
「リンネカルロ、ここは勇太に任せましょう。あの言い方の勇太は、何か強い考えがある時だから……そういう時は正しい選択をしていることが多いの」
さすがは幼馴染みの渚だ。付き合いが長いこともあり、俺の気持ちを理解してくれているようだ。
渚の言葉で、リンネカルロもしぶしぶ納得してくれた。俺を残して三人は、ミライと一緒に爆発物が仕掛けられていると思われるメディカル施設へと向かった。
みんなを見送ると、俺はゆっくりとこちらに向かってくる巨獣と対峙する。
「フェリ、あの巨獣に弱点とかないのか?」
ダメもとで聞いてみる。
「致命的な弱点はありません。しかし、頭部への攻撃が一番有効だと思われます」
「頭部か……」
頭部にはイプシロンコアがある。できれば攻撃したくないんだけど……。
巨獣が不意に上を見上げる。そして何をするのかと思った瞬間、脳に直接響いてくるほどの強烈な音が炸裂した。あまりの音量に慌てて耳を塞ぐ。しかし、耳を塞いでも、脳を揺らすほどの衝撃を感じる。重度の船酔いのような不快な感覚に気が狂いそうになる。
「致死的、咆哮です! 耐性の弱いライダーなら今のでショック死したでしょう」
フェリが怖いことをさらっと言う。
俺を獲物だと認識したのか巨獣がこちらに向かってきた。
「勇太、気を付けて下さい! 巨獣の体内で強大なエネルギーが生成されています! おそらくブレスが放たれると思われます!」
「ブレスってなんだよ!?」
しかし、フェリの説明は不要であった。巨獣の口元が淡く光ったと思った瞬間、強烈な閃光が閃く。そしてビーム砲のような光がこちらに向かって放たれた。
「避けて下さい!」
意識がとっさに回避するように操作球に伝える。横に跳躍して転がり避ける。むわっとした熱気を感じた瞬間、俺のいた場所の地面が抉り消える。
さらに巨獣から放たれている熱光線は、横に逃げたアルレオ弐を追いかけて移動してくる。横に逃げたら危険だと思い、飛行して空中へと逃げる。
熱光線はしばらく空中に逃げたアルレオ弐も追ってきたが、ジグザグに避けていると、ようやく巨獣のブレスは止まった。
「凄い威力だな……フェリ、今のが直撃したらアルレオ弐は耐えられたか?」
「シールド無しでは一撃耐えるのがやっとでしょう。シールド全開でも耐えれて2~3撃が限界です」
こりゃ冗談でも受けちゃいけない攻撃だな……。
攻撃を受けてばかりでは勝てない。今度はこちらの番とばかり魔光弾を連射する。しかし、やはりイプシロンコアが気になり、頭部を狙うのはためらってしまって、無難に胴体部分を狙ってしまう。
厚そうな皮膚に着弾した魔光弾は、パシパシと弾かれ、なんのダメージも与えられていないようだった。
「ダメです。あの程度の攻撃ではSSSクラスの巨獣にダメージを与えることはできません」
「くっ……接近して剣で攻撃しよう!」
「気を付けてください。あの巨体から繰り出される物理攻撃を受ければ、アルレオ弐でも無事にはすみません」
「わかった。当たらないようにする」
そう言うと飛行しながら巨獣に接近する。巨獣は近づくアルレオ弐の方を向いて身構えた。
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