第386話 巨獣兵器との戦い

拘束していた白い糸が燃え尽き、自由になった。さて、ここからが本番である。包囲していた繭の大半が、炎のに飲み込まれ炎上している。繭の中から蜘蛛のような巨獣兵器が慌てて飛び出してくる。


「気持ち悪いですわ! おとなしく燃え尽きなさい!」


リンネカルロが貫通力の高い雷撃の魔導撃を放つ。繭から飛び出した巨獣兵器の一体を貫き倒す。


「すでに見切りました。もうすでにあなた方は私の敵ではありません!」


清音は巨獣兵器の動きを読み、攻撃を避けながら近づく。そして頭部、胸、腹を素早く突いて攻撃した。巨獣兵器は断末魔をあげて倒れる。どうやら弱点を見抜いて、ピンポイントでそこを攻撃したようだ。


「もう、やだ!」


渚は巨獣兵器の気持ち悪い見た目が気に入らないようだ。イライラしているのがよくわかる。それは動きにも表れていた。繭から飛び出してきた巨獣兵器の一体を、ちょっと乱暴にぶん殴り、頭部を破壊する。さらに別のもう一体を掴み、地面に引きずるように押し倒すと、頭部を踏みつけて破壊した。


思いっきり不快な気持ちをぶつけられて、巨獣兵器たちが少し気の毒に思う。


それにしても三人とも、巨獣兵器に対してちょっと慣れてきたというか、あきらかに戦闘力が向上しているように見える。そういえば前に、ラフシャルがルーディア鍛錬を始めた者は、それをきっかけとして、通常の戦闘でも鍛錬と同じような効果が生まれるようになると言っていたのを思い出した。もしかしたら三人とも戦闘経験により、ルーディア値の上昇があったのかもしれない。


三人とも成長して強くなったと言っても、まかせっきりでは唯一の男児としてなさけない。俺は繭を燃やされずに残っていた巨獣兵器に向かっていった。


繭が俺の接近に反応して、白い糸を放出する。シュルシュルと伸びてくる糸を避けて間合いをつめる。そして一元素放出、炎を吐き出して繭に浴びせた。


繭は一気に燃え上がる。火力が弱いので燃え尽きるまではいかないが、繭全体に炎が広がる。


清音と違って風を操ることはできないが、風を起こすことはできる。剣を素早く振り、剣圧で突風を起こす。風を受けて酸素が増量すると一瞬、炎が大きくなる。その状況に繭の中にいる巨獣兵器が危険を感じたのか、飛び出してきた。


剣を振りかぶり、飛び出してきた巨獣兵器に振り下ろす。真っ二つに切り裂かれて地に転がった。


燃やされることに恐怖を感じたのか混乱したのか、繭を燃やされず残っていた巨獣兵器が自ら飛び出してきた。その巨獣に向けて魔光弾を連射する。


魔光弾が命中して怯む巨獣兵器に近づくと、頭部を切り落とす。頭がなくなってもしぶとく動いて攻撃してきたのでそれを避ける。そして剣を横に振り斬り伏せた。


巨獣兵器はかなりの数がいたが、数十分ほどの戦闘で殲滅することができた。これで安心してメディカル施設へと入ることができる。


「よし、片付いたな」

「最初に戦った時より弱くなってましたわね」

「確かにそれほど脅威を感じなかったわ」


最初こそ拘束されて焦ったが、その後は楽に殲滅できた。火が弱点ってのがわかったのと、巨獣兵器との戦闘に慣れたってのもあるが、全員がいつの間にか成長したのもあるように思う。


しかし、それは唐突に聞こえてきた。


脅威がなくなり、安心してミライに戻ろうとした瞬間……広いフロアー全体に響き渡るような大音量の声で、誰かが話しかけてきた。


「ハハハッ、面白い。実に面白い。私の作った巨獣兵器を容易く倒すとは実に面白い存在だ」


「なんだ?」

「だ、誰?」


謎の声にそう反応していると、向こうから名乗ってきた」


「私はデミウルゴス。この施設を管理するものだ。招待もなく侵入してきたことは許そう。しかし、その対価は払ってもらうよ」


声の主はデミウルゴスと名乗った。それにフェリが反応する。


「まさか……あのデミウルゴスが生きていたのですか!」

「知ってるのかフェリ?」

「はい、私が知る中で、もっとも悪趣味な思想を持っている科学者の名です」


フェリが嫌悪感たっぷりでそう言う。優しい彼女がそれほど嫌う人物となると、実際に会わなくてもその性格の悪さが想像できる。

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