第384話 最深部
墓場での戦闘を終えて、俺たちは先へと進んでいた。あれから特に進行を邪魔するようなものはなく順調に進んでいたのだけど、それはそれで気が緩みがちになる。大あくびをしながらミライを操縦していたジャンがこんなことを言う。
「はぁ~あ~ ふう……ネタ切れか、妨害してくる気配がないな」
「しかし、油断はできませんよ。こんな風に静かな後は何か大きなことが起こるものです」
気の抜けたジャンの言葉に、清音が冷静に意見を言う。
「もはや何がきても驚かないよ。それより早くオヤジを生き返らせて、さらにあの子を助けたら、さっさと帰りたい」
四本腕に乗っていた女の子は医療ポッドで休眠中だ。なんとか彼女も助けたい。
フェリが医療ポッドの遠隔端末でオヤジと、あの彼女の容態を確認している。さらにチラチラと地図も見ていた。そんな忙しい天才学者が、大きな下穴に降下中にこう知らせてくれた。
「いよいよ最下層に到着です。この先に目指す高度なメディカル施設があるはずです」
最下層はかなり広い空間であった。その中心部分に大きなドーム型の建造物がある。おそらくあそこに目指すべく施設があると思われる。
しかし、最下層のその空間には見覚えのある物があった。渚が驚きの声をあげる。
「ちょっと待って! あれって上の階層で見たのと一緒じゃない!?」
そこにあったのは昆虫の繭に似たものであった。しかも驚くことにそれは一つではなかった。
「ウソだろ……」
そう言いながらジャンの顔色が変わる。
ざっと見ただけでも数十体は存在している。一体でもあれほど厄介だったのに、この数はさすがにヤバイだろう。
「あれが全部、巨獣兵器ですの?」
「みたいだな。しかし、あれをどうにかしないとメディカル施設にはいけそうにないな」
巨獣兵器の繭は、中央にある建造物を取り囲むようにあった。あれを無視していくのは無理がありそうだ。
「まあ、戦うしかないよな……」
俺が諦めたたようにそう言うと、リンネカルロも同意する。
「そうですわね。ちゃちゃっと行って片付けますわよ」
「リンネカルロ、そんなに簡単に言わないでよ。あの怪物、結構強かったわよ」
渚が言うように楽に勝てる相手ではない。
「強かったと言っても一度は倒している敵、数が増えたくらいで恐れる必要はございませんわ」
「確かにそうね。もう敵の力量は理解していますし、油断しなければなんとかなるでしょう」
リンネカルロが言うとあれだけど、清音が言うと説得力がある。確かにこのメンバーならなんとかなるかもしれない。
話が決まれば即実行だ。すぐに全員、魔導機に搭乗して出撃した。
「一体ずつ確実に片付けるんだ。連携して素早く仕留めろ」
ジャンが簡単にそう指示する。そうしたいけど、そんなにうまくいくかな。
繭の一体に近づくと、すぐに攻撃を開始した。繭の方も俺たちに気が付いたのか、糸を触手のように伸ばして反撃してくる。全員、こいつとは戦闘経験があるので、ある程度動きが見えているようだ。みんな無難にその攻撃を避ける。
白い糸の攻撃を避けながら清音が繭に接近する。間合いに入ると、居合の要領で、素早く斬りつける。鋭い剣撃は強固な繭を切り裂き、穴を開けた。
すると、予想通り、中から蜘蛛の巨獣兵器が飛び出してくる。二度目なので驚きはしない。
飛び出してきた巨獣兵器を、渚が思いっきりぶん殴る。かなりの威力のようで、直撃した頭部が変な方向に曲がった。
さらに追い打ちでリンネカルロの雷撃が放たれる。密集した雷は、まるでレーザービームのように巨獣兵器を貫通する。どうやら丈夫な敵用の魔導撃のようで、威力はいままで見たリンネカルロの攻撃の中でも群を抜いていた。
もうすでに虫の息のように見えるが、最後は俺がとどめをさす。穴が開いてピクピクと震える巨獣兵器を一刀両断した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます