第379話 ためらい
眠るようにいる女性の姿を見て攻撃をためらっていると、四本腕が杖で殴りつけてきた。魔導撃だけでなくパワーも相当あるようで、かなり重い一撃を受ける。
「フェリ! あれはなんだ! どうなってるんだよ!」
衝撃を受けながら俺はそう叫んでいた。女性の死を望む声が頭から離れない。どうしていいか判断できなかった。
「おそらく、人とルーディアコアの直結化、ダイレクトコネクション……イプシロンコアとも呼ばれている邪法です。人を魔導機の部品として扱う非人道的な技術の為、古代文明時代にも禁止されていたものです。まさか、それを実用化レベルにまで開発していたなんて……」
イプシロンコアと言われてもピンとこないけど、邪法というのは納得する。どうみても良い感じなんてしない。
「それでどうすればいいんだ!?」
「……第一装甲を失ったカプセル部分が弱点となります。イプシロンコアを破壊すればあの魔導機を止めることはできます」
「いや、そうじゃない! あの子を助けることはできないのか!? どう見ても無理やり、あんなものの中にいれられてるよな?」
「残念ながら難しいでしょう。イプシロンコアが生命維持装置の役割もになっていることもあり、コアから引き剝がすとすぐに死んでしまいます。もし、上手く取り外し、生命を維持することができたとしても、アストラルダメージを回復させることができるかは未知数です。あのコアが望んでいるように、生命活動を停止させるのがベストだと考えます」
それを聞いて俺の心は決まった。
「よし! 可能性がゼロでないなら、助ける! コアを傷つけないであの魔導機を倒す方法はないか?」
その言葉にフェリの反応が一瞬停止する。何か怒らせるようなこと言ったかと心配になり始めた時、答えが返ってきた。
「時折思います。私はすでに人ではなくなっているのではないかと……感情すらデータ化して、常に合理的にしか物事を考えることができない思考は、人と言うよりはAIではないかと……ありがとう、勇太。こうして人を思い出させてくれることを嬉しく思います。そうですね、確かに可能性はゼロではありません。だけど、覚悟してください。コアを破壊しないであの魔導機を停止させるのは至難の業ですよ」
「わかってる。だけど、俺はそれしか選択したくない」
「わかりました。それでは背中にある大エレメンタルラインと、頭部にある念動破の増幅装置を破壊しましょう。それで停止するかは構造によりますが、一番可能性が高いと思います」
「背中と頭だな」
その時、女性の悲痛な声がまた聞こえる。
「苦しい……殺して……殺して私を解放してください……」
しかし、その言葉とは裏腹に、四本腕の攻撃はさらに激しくなっていく。不用意に攻撃できない俺に容赦ない魔導撃が放たれる。動揺しているのかその攻撃を避けきれなかった。機体に重い衝撃を受ける。
「くっ……清音! 話を聞いてたか!?」
「はい。四本腕の女性を救うのですね」
周りの動き出した廃棄魔導機を倒しながらも、俺とフェリとの会話を聞いていたようだ。
「一人じゃ難しそうだ。手伝ってくれ!」
「わかりました。私は何をすればいいいですか」
「俺が全ての攻撃を受けているから、その間に後ろに回って頭部を斬り飛ばしてくれ」
「頭部ですね。やってみましょう」
そう言うと清音は、サササッと移動して敵から姿をくらます。俺は四本腕の注意を惹く為に、コアを傷つけないようにそっと攻撃を繰り出すことにした。
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