第378話 ネクロマンサー
強烈な閃光と、破壊をもたらす熱線が魔導機の山に向かって放たれた。山積みにされた魔導機は、全体が大きな生物のように膨らみ四散する。多くの魔導機が破壊されるが、絶対数が多すぎて、まだまだ廃棄された魔導機は多く残る。
「勇太! 何かいるわよ!」
いち早く清音がその存在に気が付いた。破棄された魔導機とはあきらかに存在が違う、四本腕の漆黒の魔導機。山積みの魔導機の中に混ざって放置されているように見えるが、そいつだけは生きているように感じた。
「あいつが親玉か!」
「おそらくはそうでしょう。強大なエネルギーを感じます」
四本腕の魔導機から異変を感じる。微動だにしていなかったのだが、鼓動のような音が聞こえてきて震えるように機体が動く。
「ルーディアコアの起動を確認しました! 勇太、あの魔導機が動き始めます!」
「完全に動き出す前に倒す!!」
俺は左腕を四本腕に向けて、魔光弾を連射した。動き始めで隙だらけの四本腕に全弾命中すると確信したが、被弾する前に、周りに転がっている魔導機がワラワラと四本腕を庇うように出てきて壁を作る。
「なにっ!」
全ての魔光弾は壁となった魔導機たちに命中する。俺はその魔導機の壁を避けるように移動して、再度、魔光弾を連射した。しかし、その動きに合わせて、周りの魔導機たちが壁を作りそれを妨害する。
「だったら接近して剣で倒してやる! 清音、いくぞ!」
「わかりました」
俺と清音は魔導機の壁をかいくぐり、四本腕の魔導機に接近する。剣の射程に捉えた時、近くの魔導機たちが抱き着くように邪魔をしてきた。しがみつき動きを止められると、次から次へとタックルするように覆いかぶさってくる。
「くそっ! うっとおしい!!」
一気にルーディア集中してパワーを全開にする。そしてしがみついてきた魔導機たちを強引に払いのけた。
「勇太、ここは私が! あなたはあれを倒しなさい」
「よし! 任せた!」
ワラワラとゾンビのように襲い掛かる魔導機は清音に任せて、俺は四本腕に接近する。そして剣を振り上げて、一刀両断にしようとした。しかし、強烈な衝撃を受けて弾き返される。
「ぐわっ!」
見ると、四本腕の魔導機は完全に起動していた。周りに赤いオーラを纏い、杖のような武器をこちらに向けていた。その武器が不気味に光る。次の瞬間、体中に衝撃が走る。
「ぐくっ! うっ……な、何の攻撃だ!」
意味不明の状況に、すがるように尋ねた。フェリがすぐに答えてくれる。
「念動属性の魔導撃です。出力はリンネカルロの雷撃を上回ります」
「リンネカルロの雷撃より強いのか!?」
そりゃヤバイ。いくらアルレオ弐でもそんなの何度も耐えられないぞ。しかし、威力よりもっとヤバイのは、まったく攻撃が見えなかったことである。見えなきゃ避けようもない。
迷っていると、二撃目の攻撃が放たれた。やはり何も見えなかった。苦戦しているのを見て、清音が声をかけてくれる。
「見ようとしてはダメです! よく考えて下さい。父上の本気の太刀筋は見えましたか?」
確かにそうだ。オヤジが本気で打ち込んできた時の剣撃なんて、とても見えるもんじゃなかった。しかし、それでも修行の後半ではある程度は反応できるようになっていた。そうか、あの感覚……見るのではない、感じる感覚を応用するんだ。
四本腕がこちらに向けて杖を構え直す。俺は意識を集中する。そして敵が攻撃してくるタイミングを感じた。
「今だ!!」
俺は斜め前に転がって、それを避けた。衝撃は感じない。回避に成功したようだ。さらにそのまま四本腕に接近する。残念だが強力な魔導撃を連発できないようだ。俺の接近に対して追撃してこない。
そのまま斜め上段から、四本腕の胸に向かって剣を叩き下ろした。ガキッンと高い音が響いて、胸の装甲が剥がれ落ちる。
二撃目でとどめをさす! そう思って、剥がれ落ちた装甲部分を狙って剣を突き刺そうとした。しかし、その時、俺の目に驚くものが飛び込んできた。俺は慌てて剣を止める。
「な……なんだよこれ……」
四本腕の魔導機の胸に、透明の丸いカプセルのようなものが埋め込まれていた。そのカプセルには、全裸の女性が無数の管を付けられて入っていた。女性には意識がないように見える。
躊躇していると、またあの声が聞こえてきた。
「こ……ころして……私を殺してください……」
今度ははっきりと言葉が聞こえた。それは理解しがたい切なる願いだった。
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