第376話 魔導機墓場
そういえばフェリは今の言葉に対してどう感じたんだろう。そう思っていると、彼女の方から見解を発言してくれた。
「さっきの音声について調べていましたが、どうやら特殊な指向性拡声器によるもののようですね。ある方向からピンポイントで音声が送られた形跡があります」
フェリの言う指向性拡声器というものがどういったものかわからないけど、そういう技術があるようだ。
「ある方向って、どっちの方から送られてきたかわかるか?」
ジャンの質問に、フェリが即答する。
「はい。南東約500メートルの方向から送られたようです」
「よし、ミライは動けないから、勇太、清音、二人で出撃して確認してきてくれ」
その指示に対して、名前の挙がらなかったリンネカルロが抗議の声をあげた。
「ちょっと、ジャン。私も出撃してもよろしくてよ」
「そもそも、声そのものが罠の可能性もあるだろ。声の方に誘い込んでこちらを攻撃してくる可能性もあるから、ミライを手薄になんてできないだろうが」
「それはそうですけど……」
リンネカルロは納得してはないようだけど、言い返すほどの理由もないのか黙り込んだ。ジャンはそんなリンネカルロを放置して、俺たちに念を押す。
「勇太、清音、何かあったらすぐ知らせるんだぞ」
「わかってる」
とりあえず、声の方向を調べる為に俺と清音はミライから出撃した。しかし、さっき、リンネカルロが言っていたように、魔導機の出力低下がアルレオ弐にも影響しているようで、どうも調子が悪い。
「清音、アルレオ弐の調子がおかしい。そっちは大丈夫か?」
「大丈夫ではありません。まるで水の中で動いているような感覚です」
やっぱり、ミライを停止させている何かの力の影響があるようだ。何かわからないかフェリに聞いてみる。
「フェリ。魔導機の不調の原因はわからないか?」
「特殊なフィールドが展開されているのは検出していますが、その正体については検証中です。おそらくルーディアコアに影響する、なにかしらの力だとは思うのですが、私のデータベースには該当する事例がありません」
フェリにもわからないような未知の力が働いているってことは、気を引き締めないと危険なことになるかもしれない。しかし、なんにせよ、幽霊とか亡霊とかの類ではないことは確かなようだ。この話を聞いたら渚も安心するだろ。
声が送られてきた場所に到着した。このフロアー全体が得体のしれない雰囲気なのもあるだろうけど、そこにあったものを見てちょっと背筋が寒くなる。
「不気味なところですね……」
冷静な清音も気持ち悪く感じたのか静かなトーンでそう言う。
そこにあったのは無数の魔導機の残骸であった。しかも、戦場で破壊された魔導機と言った感じではなく、まるで大量虐殺した人間を無造作に山積みにしたような異様な光景であった。魔導機が大好きなファルマやライザが見たら恐怖より怒りを感じるだろう。
「古くなった魔導機を破棄したって感じじゃないな」
「そうですね。どちらかと言うと、憎しみこめて放置している風に見えますね」
魔導機の墓場というより処刑場と言った方がしっくりくる。それくらい魔導機に対するリスペクトを感じないものであった。
声を送った主はこの中に潜んでいるかもしれない。俺と清音は不気味に思いながら、山積みに放置されている魔導機を調べ始めた。
「勇太! 今、その辺り動きませんでした!?」
調べていた清音が大きな声でそう伝えてくる。すぐに菊一文字が見ている方向を見るが、特に動きがあるようには見えなかった。
「気のせいじゃないのか?」
「いえ、確かに動いたように見えました」
念のため、フェリの確認する。
「フェリ。周辺に、俺たち以外に起動している魔導機はあるか?」
「いえ。ルーディアコアの起動周波は確認できません」
やっぱり清音の気のせいだろう。そう思った時、俺の目にもはっきりと、山積みになった魔導機の一角がモソモソと動くのが見えた。ルーディアコアの反応はないから動物か何かと思ったのだけど、倒れていた魔導機がゆっくりと立ち上がってくるではないか。しかもそれは一体だけではなかった。無数の魔導機が次々と起き上がろうとしていた。
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