第377話 墓場の亡霊

魔導機が次々と起き上がり、まるでゾンビのようにゆらゆらとこちらに近づいてくる。異様な動きに、清音も戸惑っているようだ。


「ジャン、戦いになりそうだ」

「どうした。敵襲か!?」


敵襲と一言で表すにはあまりに敵が不気味である。しかし、不気味であろうが気持ちわるかろうが、襲ってくる相手には戦うしかない。しかも話の通じる相手には到底見えなかった。ここは剣で応えるしかないだろう。


清音もそう判断したようで、剣を構えて敵の攻撃に備えていた。俺も同じように剣を抜いて中段に構える。ゾンビのような魔導機たちはワラワラと周りから迫ってくる。清音の死角になる方向に向いて攻撃に備えていると、自然と菊一文字と背中合わせになる。


「一体一体は強くなさそうですけど、数が多いので油断してはダメですよ」

「わかってる」


そのやり取り後、俺たちはすぐに動いた。一大きく踏み出すと、横一線に剣を振る。フラフラと近づいてきていたゾンビ魔導機の三体をその一撃で粉砕した。


清音は下段から剣を振り上げ一体を斬り伏せると、神速の突きで三体を破壊する。さらに体を回転させながら踏み込むと、斜めに剣を二度振り、近づいてきた二体のゾンビ魔導機を片付けた。


魔光弾を連射しながら敵の中に突撃すると、接近した敵機を剣を振り回して破壊していく。清音と二人、かなりの撃滅スピードで破壊していくが、それより起き上がってくる魔導機の方が多く終わりはやってこない。


歯応えのない相手だが、墓場から次々と起き上がり襲い掛かってくるのは厄介でキリがない。


「くっ! これ、全部動き出すのか!?」

山積みにされている魔導機は数えきれないほどある。これが全て起き上がると思ったらゾッとする。


「大丈夫か、勇太、清音!? どうなってるんだ?」

状況が気になったのかジャンがそう聞いてくる。


「ゾンビと戦闘中~! 大丈夫ではあるけど、もうお腹一杯だ」

「ゾンビだと!? なんだそれは?」


こちらにはゾンビという概念がないようで、ジャンには話が通じなかった。しかし、細かく説明している暇は無い。俺はゾンビの説明を渚に振った。

「悪い、渚。ゾンビの説明をジャンにしてくれ」

「ええ!! 私、ゾンビなんてそんなに詳しくないわよ」

「いいから頼んだ」


渚はブツブツ文句を言いながらも仕方なく少ない知識でゾンビの説明をし始めた。死体が人を食べると言ったところで、リンネカルロが悲鳴を上げた。


「勇太。動いている魔導機ですが、どうも個性を全く感じません。もしかして独立して起動しているのではないかもしれませんね」

「清音、どういうことだ?」

「このようなことは初めてなので説明できませんが、何か一つの意識に操れているような、そういう感覚を感じます」


どういうことだろ。確かに行動パターンも少なく、動きを読みやすいとは感じるけど。


「清音の言っていることは正解のようです。この魔導機たちは、外部からの力で動いているようです。特殊な念動破をキャッチしました。動いている魔導機たちは、たんなる操られている人形にすぎません。操作している者は別に存在します」


「そう言う事か……フェリ! その念動破の発生元がわかるか!?」

「そう遠くはありません。目の前の魔導機の山、その中からのようです」

「よし、そう言う事なら話は早い。あの山を吹き飛ばしてやる! フェリ、四元素砲を撃つぞ!」


「わかりました。しかし、周囲へのダメージを考え、出力は60%ほどに抑えます」

「わかった。それで準備してくれ。清音、危ないから下がっててくれ」


発射準備が整ったようだ。俺は清音が後ろにさがったこと確認すると、魔導機の山に向かって四元素砲をぶっ放した。

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