第367話 水中戦
水中では四元素砲などの強力な魔導撃は使用してはいけないとフェリに言われた。理由は、属性反発による元素バースト云々との説明を受けたけどよくわからなかった。とりあえず危ないから使うなと念を押される。
「渚、俺が囮になるから、死角から攻撃してくれ!」
水中での機動力では負けているが、幸いにもこちらは二人いる。連携で機動力を補うことにした。
剣を構えて魚巨獣兵器を挑発する。知能はそれほど高くないのか、俺の挑発に簡単にのってきた。マグロの突進のように物凄い速さで向かってくる。
丈夫なアルレオ弐ならまともに突進を受けても致命傷にはならないと思うが、念の為に両腕でガードして防御を固める。
魚巨獣兵器がアルレオ弐にぶつかり、かなりの衝撃を感じる。だが、さすがは丈夫なアルレオ弐、ダメージはそれほど大きくないようだ。
アルレオ弐に突進してぶつかったことにより、魚巨獣兵器は一時的に動きが止まる。そこを狙って渚が太刀を突き出して攻撃した。太刀は魚巨獣兵器のエラ部分に突き刺さる。痛覚があるのか、魚巨獣兵器はピチピチと暴れて太刀を引き抜こうとした。
俺は魚巨獣兵器の頭をがっちりと掴んで動きを止める。すると渚は、太刀をぐいっと引いて、魚巨獣兵器を真っ二つに切り裂いた。
「ふう~なんとか片付いたな」
「確かに素早かったけど、それほど強くはなかったね」
仕留めた余裕からか、渚が魚巨獣兵器をそう評価した。しかし、そんな俺たちの終わった感をフェリの言葉がかき消す。
「まだ終わっていません! 複数の反応が近づいて来ています!」
「なに! 複数って、どれくらいだ?!」
「数百ほどの反応があります!」
勘弁してくれよ……さすがにその数を相手にするのは厳しいぞ。
「勇太、壁を壊しましょう! 水が抜ければあの魚には何もできないよ!」
「おっ、確かにそうだな。よし、俺が魚巨獣兵器を引き付けるから、その間に渚は壁を破壊してくれ!」
「わかった。やってみる」
フェリの言うように、奥の方からワラワラと魚巨獣兵器の群れがこちらに泳いできた。一匹なら大したことないが、あの数に襲われたらちょっと危険かもしれない。
「フェリ、渚はどれくらいで壁を破壊できるんだ」
「強力な魔導撃が使えない状況でも、ディアテナの攻撃力なら二分ほどで破壊できると思います」
「よし、それまで時間を稼ぐぞ!」
二分くらいならどうにでもなりそうだ。俺は魚巨獣兵器が渚の方へといかないように注目を集めた。
魚巨獣兵器の群れを見て自然とルーディア集中に入る。目を閉じ耳を塞ぐ。五感の情報を遮断して、感覚で敵の攻撃を感じ取ろうとする。魚巨獣兵器の動きはさっき見て把握している。見て動いていては間に合わない。俺は剣を構えて攻撃に備えた。
アルレオ弐の周りの水が激しく動くのを感じる。魚巨獣兵器の群れが一斉にこちらに向かって襲ってくるがわかった。水の揺れから魚巨獣の突撃してくる軌道を予測して回避する。衝撃を受けなかったので、まずは回避に成功したようだ。さらに連続で突撃してくるのを最小限の動きで避ける。これも上手く避けたが、間髪入れずにきた次の突撃には対応できなかった。もろに背中部分に体当たりされ、強烈な衝撃を受ける。
「ぐっ! くそっ、ミスった」
さらに休む暇なくどんどん突撃してくる。八割ほどは避けることができたが、残りの二割は直撃をくらう。一撃、一撃と当たる度に衝撃を受けて、だんだん腹が立ってくる。イライラした俺は、一匹の魚巨獣兵器の突撃のタイミングに合わせて剣を振り、真っ二つに切り裂いてやった。
しかし、焼け石に水、一匹切ったくらいでは状況は変わらない。それどころか仲間をやられたことに怒ったのか、攻撃の勢いが激しくなったようにすら感じる。
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