第366話 水中の罠
水たまりにより進むことができない状況をどうするか、軽く話し合いをする。
「別のルートを進むしかないんじゃない?」
「確かにそれしかないかな……」
「けど、他は罠がある可能性が高いんでしょう?」
「そんなもの蹴散らせばいいだろ」
「扉の壁やガーディアンでの待ち伏せなど、巧妙な手口を見ると、ここに住まわってる御仁は油断できない相手だと思います。真っ正面での勝負なら負ける気はしませんが、予想もしない罠があると痛い目をみる可能性がありますよ」
清音の言うように戦いでは負ける気はしないが、とんでもない罠が仕掛けられていたら厄介だ。けど、通れないんじゃどうしようもないしな……。
「ここ周辺のマップを見直していたのですが、もしかしたらこの水たまりの水を除去できるかもしれません」
フェリが不意に新しい情報をくれた。それに食いつく。
「どうやるんだ?」
「水たまりの奥にある、ここの壁を破壊するんです。そうすれば、水を下の階層に流し込むことができると思います」
「破壊できる壁なのか?」
「構造的にフロアー全体にダメージを与える箇所ではありませんし、比較的薄い壁ですので問題ないと思います」
「よし、その案でいこう! 勇太と渚で水たまりに入って、その壁を破壊してくれ。リンネカルロと清音は何かあるかもしれないから、出撃して周辺を警戒してくれ」
ジャンの判断で水たまりの水を除去することになった。俺たちは魔導機に乗り込み出撃する。清音とリンネカルロは周辺を警戒し、俺と渚は水たまりの中へと入っていく。
「凄い透明度の高い水ね。この水ってどこからきたのかしら」
渚の言う通り水質は驚くほどよく、かなり先までよく見える。確かにこんな綺麗な水が人工的な施設の中に溜まっているのは不思議だ。
「水道管でも破裂したんじゃないのか?」
「水道管が破裂したくらいでこんなに水が溜まるものものなの?」
「いや、わかんないけど、それくらいしか思い浮かばない」
不毛な予想をしていると、フェリが答えを教えてくれた。
「地下水脈から意図的に水が流し込まれた形跡があります。もしかしたら最下層へのルートを減らす為におこなわれたものかもしれません」
「なるほど。これもここにいる住人の仕業ってことか」
水たまりの中でも、魔導灯は煌々と周辺を照らしていた。明るいので迷うこともなく、目的の壁へとたどり着いた。しかし、その時、フェリが警告の声をあげる。
「勇太! 水流に変則的な変化が見られます! 気を付けて下さい! 何かが近づいてきています!」
その警告のすぐあとに、強烈な衝撃を感じた。何かがアルレオ弐に体当たりしてきたようだ。
「ぐっ! なんだよ! 敵はどこだ!?」
すぐに確認するが、驚異的なスピードで動いているのか敵の姿をとらえることができなかった。
「勇太! 上よ!」
オロオロと敵を探していると、渚が教えてくれる。見ると、マグロのような風貌の巨大な何かが、凄いスピードで泳いでいた。
「魚か!?」
「いえ、あれは巨獣兵器です。水中での活動に特化した巨獣から作り出したものでしょう」
「また、そんな妙な物作るなよな……」
「気を付けて下さい、勇太。水中での動きは、アルレオ弐やディアテナより数段、早いです」
確かに、いくら万能なアルレオ弐でも水中では動きは制限される。それにくらべて、見た目から水中で活動する為だけに存在するような魚巨獣兵器が相手では、完全に地の利はあちらにありそうだ。
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