第364話 クラスメイトの情報
エミッツとミルティーの二人が増えたことで、食事が少し賑やかになった。二人は、自分たちののせいで食料が不足するのではないかと心配したが、ミライには十分な食料を積み込んでいるので、二人くらい増えても問題ない。
「我々は余り物でも頂ければ十分です」
「何言ってるんだよ。食料は十分あるって説明したろ? 遠慮しないで食べたらいいよ」
食事が俺たちと同じメニューなのに驚いて、エミッツは遠慮してそう言うが、本当に困ってないから気にしなくていい。
渚や清音からも遠慮しないでと声を掛けられて、二人は恐縮しながらも食事に手を付けた。
「お、美味しいです。こんなに美味しい物食べたのは久しぶりです」
あまり演技とかできなさそうなので、エミッツの言葉は本音だろう。まあ、確かにジャンの作る、カレーに似た香辛料たっぷりのこの煮込みスープはかなり美味い。俺も大好きなメニューの一つだ。
あまり声に出して反応はしなかったけど、ミルティーもこの料理が気に入ったのか、一心不乱に食べている。
「おかわりはいっぱいあるから、どんどん食べてくれ」
ジャンも自分の料理を気に入ってくれたのに気をよくしているようだ。どことなく機嫌がいいようだ。
食事を終えると、お茶を飲みながらエミッツとミルティーの話を聞いた。エミッツの身の上話はある程度聞いているので知ってはいたが、リュベル王国でも有名な軍閥貴族の出身だと言うのは驚いた。
ミルティーは一般的な平民出身だそうだ。ハーフレイダーだったことで軍に取り上げられ、軍学校に入ることができたそうだ。本来、一般市民には学びの機会すら与えられないそうだが、ルーディア値が高いとこういうところでも優遇されるようだ。
「勇太は地球人なのですか。だからあんなに強いのですね」
俺が地球から転移されてきたと話すと、エミッツが興味を示してきた。
「その言い方だと、地球人を知ってる感じだな。もしかしてリュベル王国にも地球人はいるのか?」
「はい。軍だけでも数十人は在籍しております。皆、強力なライダーばかりで、心強い存在です」
「そうか……そうだ。俺の知り合いが同時にこの世界に転移してきて、同じようにオークションで売られたんだけど、もしかしてリュベル王国に誰かいるのかな」
恥ずかしながらあの時のオークションのことはあまりよく覚えていなかった。ルーディア値2だと言われて馬鹿にされて、かなり動揺していたこともあり、細かい情報は何も頭に入ってこなかった。なので、誰がどこに買われていったのかなんて把握していない。もしかして何十人もいるならクラスメイトがいるのではないかと尋ねた。
「知り合いと言うと、もしかして年齢は近いですか?」
「ああ、みんな同年代だよ」
そう言った後に南先生のことを思い出したけど、あえて訂正はしなかった。エミッツは少し考えてからこう答えた。
「一人います。榊春馬という人物ですがご存じですか」
「おっ! 春馬はリュベル王国にいるのか! そうそう、そいつはクラスメイトだよ。春馬は元気にしてるのか?」
「直接には知り合いではないのでよくわかりませんが、あの若さで化学技術部の高官に任命され、ライダーとしても実績もありますので順風満帆と言えるのではないでしょうか」
「そうか、それならよかった。科学技術部ね……よくわからないけど、難しそうなところにいるんだな。まあ、あいつは頭が良かったから丁度いいのかな」
リュベル王国とは戦争をした間柄だ。もしかしたら春馬とも戦っているかもしれないってことか……。そう思うと少しだけ不安になった。クラスメイトをこの手で……そう考えるとゾッとした。
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