第360話 文明の衰退

巨獣兵器はなんとか倒した。本体を倒したことで、繭は力を失ったように干からびた。これで安全にここを通過することができるだろう。


「巨獣兵器とはまた厄介なものがいたな」

ジャンはミライのブリッジから、干からびた繭を見ながらそう言う。


「どうして巨獣なんか兵器にしようと思ったんだろうな。散々痛い目あったんだろ?」


俺がそう聞くと、フェリの疑似体は重い間を置いてこう語る。


「人間とは本当に愚かな生き物です。巨獣と戦う為に作られた魔導機は、巨獣が封印されその役目を終えると、次は同じ人類と戦う為に使われるようになりました。争いが始まると、自ら封印した巨獣まで使って相手より、より大きな力を得ようとする。なんとも滑稽な話です」


「人間さまにとっては敵が巨獣だろうが、人だろうが関係ねえんだよ。自分の主張と違うものや、邪魔だと思う存在より強くなれればそれでいいんだろ」


ジャンは人の愚かな一面を良く知っているのか、フェリの言葉に同調して投げやりな感じでそう言った。


「お互いがそうやって、なりふり構わず戦ってたら最後は敵も味方もみんないなくなりそうだな」

「勇太にしては鋭い意見ですね。古代文明はそうやって衰退していったのです。大きな力と大きな力の衝突は、より大きな消滅を生むだけです」


勇太にしてはって一文はいらない気がするが、凄い技術を持っていた古代文明の衰退の理由は、その凄い技術がゆえにってことなんだな。



巨獣兵器を倒して先に進むことになったけど、よく考えたらこの研究施設の安全が確保されたわけではないんだよな。いや、それどころか、ここが元々、巨獣兵器なんて物騒なものを研究していた施設だってことがわかって、この先より危険なことが起こる可能性が高くなったってことじゃないだろうか。


他のみんなも俺と同じ考えのようで、警戒心が強くなった。素早く危険に対応できるように、順番で魔導機で待機することになり、見張りの当番も決めた。さらにこの先、何が待ち受けているかわからない。休める時に休もうということで、周囲の安全を確認すると俺たちは少し休憩することにした。


「巨獣兵器が他にもいるかもしれないって思うと、ゆっくり休んでもいられないですわね」

リンネカルロはそう言いながらも、寛いで果実水を飲みながら、衣服ばかり載った雑誌を読んでいる。十分休んでいるように見えるけど……。


「近頃、どこもかしこも戦争のことばっかりだな。ヴァルキア、リュベル連合とアムリア連邦の戦争はまだ記事になってねえのか」

ジャンは雑誌を読みながらブツブツと何か独り言を呟いている。


「ジャンがよく読んでるそれって、何が載ってるんだ?」

ジャンはリュベル王国出発前にたくさんの本を購入していた。基本勉強家な男なので暇さえあれば何かの本を読んでいるのだけど、特に今読んでいる炎の鳥の表紙の雑誌をよく読んでいる。

「これはな、この大陸で何が起こっているかまとめてくれてる情報誌だ。他にも情報誌はあるけど、やっぱりラドル出版が出してるこいつの情報が一番早いからな」

「へぇ~そうなんだ。地球で言うと週刊誌みたいなものかな。それで、どんな記事が載ってるんだ」

「そうだな、一面の記事はエリシア帝国の十軍神の特集だな。ルーディア値数十万の怪物連中が就任したらしい」

「数十万! それは凄いな」

「ルーディア値数百万が何言ってんだ。まあ、これではっきりしたけど、勇太、ニトロルーディアっていう技術でインフレしたルーディア値の中でも、お前は飛びぬけてすげーってことがわかったってことだ」

「そうなのか?」

「エリシア帝国のライダーは大陸最高レベルだぞ。それでこの程度の数値なんだからそうだろうよ」


まあ、あまり実感はないけど、ジャンが言うならそうなんだろう。ジャンは十軍神とやらの紹介を言い始めたのだけど、あまり興味がないので、聞かずに俺は食堂に飲み物を取りにいった。


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