第359話 兵器転用
繭に接近したことで、白い糸の攻撃が激しくなる。あらゆる方向からアルレオ弐を捕まえようと襲ってくる。こちらの動きを予測されないようにジグザクに不規則に避けると、さらに繭に接近した。
魔光弾が通用しないような相手だ。俺はルーディア集中に入る。集中が高まると、剣の形状が変化する。より大きく、より鋭く、そして青い光が刀身を包み込む。
繭をルーディア集中で強化された剣で斬りつける。バシュバシュと繭を覆う白い糸の塊が切り裂かれた。魔光弾を弾き返す強度のある白い糸も、アルレオ弐の本気の剣の斬撃を防ぐのは無理だったようだ。
「勇太! 気を付けて! 何か動いてる!!」
切り裂かれた繭の中を見た渚が大声で警告する。警戒しながら中を覗き込む。真っ暗でよく見えなかったが、幾つもの赤い小さな光が浮かび上がって何かが潜んでいる事に気が付いた。
繭を切り裂いてからは白い糸の攻撃は止んだ。その代わりに、繭の様子がおかしくなる。ミシミシと音を立てて、繭が膨張を始める。やがて膨張が限界にきたのか、俺が切り裂いた箇所が大きく広がっていく。そして……とうとう中に潜んでいたモノが姿を現した。繭の穴は全体の半分以上に大きくなり、黒い物体が繭を突き破るように這い出てきた。
「きゃっ!!」
「……想像より醜いですわね……」
渚とリンネカルロは現れたモノを見て強烈な拒絶反応を示した。清音は冷静に現れたモノを睨みつける。
繭に潜んでいたのは蜘蛛のような怪物で、うにょうにょと気持ち悪く無数の腕を動かし、体に対して小さめの頭にある、無数の赤い瞳を不気味に輝かしていた。そんな気味の悪い風貌に、魔導機の数倍の大きな体を持っていると想像以上にインパクトがある。渚やリンネカルロがびびって動けないのは仕方ないと思った。
「ありゃ、なんだ! 巨獣なのか!?」
ジャンが言うように新種の巨獣と俺は思った。しかし、フェリがそれを否定する。
「巨獣のデータとは一致しません。しかし、まったく別物ではないように思います……まさか、巨獣兵器!! そうであれば油断できません。勇太、全力で駆逐することを推奨します」
「巨獣兵器ってなんだよ!」
「古代文明のとある科学者が、巨獣を兵器転用しようと作り出した化け物です。ここはもともと巨獣兵器の研究施設だったのは知っていましたが、巨獣兵器は全て破棄されたと聞いていたのですけど……まさか生き残りがいたとは想定外です」
「巨獣を兵器転用だって! ちょっとヤバそうだな」
巨獣兵器は、サササッと信じられない早さで清音の菊一文字に近づく。清音は、その驚異的なスピードにも反応して剣を振り上げた。カキンッと高い音がして、清音の剣は弾き返された。エクスランダー専用機でも切り裂く清音の剣が弾き返されたのには驚く。巨獣兵器はそのままのスピードで体当たりして菊一文字をぶつかり倒す。そしてそのまま覆いかぶされり、頭部にあるニッパーのような二本の牙で、菊一文字の首元に食いつこうとした。
「させない!!」
清音の近くにいた渚がすぐに動いた。風貌にビビっていても流石は武道家である。恐怖を打ち消して、巨獣兵器に拳を叩き込む。円形の波動が目視でくるほどの強烈なパンチは、菊一文字から巨獣兵器を引きはがすには十分な威力があった。
ディアテナの拳で巨獣兵器は吹っ飛ばされる。転がる巨獣兵器に向かって、ヴィクトゥルフから雷撃の魔導撃が撃ち込まれた。
「さっさと消えてなくなりなさい!!」
清音の剣を弾き返す強度があることを考えると、それで終わるとは思えなかった。俺はさらに追撃する為に、雷撃を受けた巨獣兵器との間合いを詰める。
「とどめだ!!」
アルレオ弐の剣が巨獣兵器を一刀両断に切り裂く。真っ二つに割れた巨獣兵器は、しばらくウネウネと動いた後、その活動を停止させた。
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