第338話 リュベル王国入国

俺たちはジャンの操縦するライドホバーで国境を越えてリュベル王国へと入国した。リュベル王国では俺たちの入国が事前に伝わっていたので、すでに監視する為の部隊が迎えにきていた。


「アムリア連邦所属の船舶とお見受けする。こちらリュベル王国軍、中央軍所属の艦艇『ソウブ』リュベル王国国内での貴公の安全確保の為にこれより同行させていただきます」


「リュベル王国国内の貴公の安全とは笑わせてくれますわね。たんなる監視の部隊じゃないですの」

リンネカルロが相手の言葉に対してそう突っ込みをいれるが、ジャンは違う見解を示した。

「いや、本当に護衛の意味もあるかもな」

「どういう意味だジャン?」

俺も護衛なんて建前だと思っているから、ジャンの言葉の意味がわからなかった。


「たとえば今回の戦いで親しい身内を失った貴族とかが、アムリア連邦に強い恨みを持っていても不思議じゃねえよな? そう言う奴らが国の意思とは関係なく、俺たちを攻撃しようとする可能性はゼロじゃねえ」

「それを止める意味もあるっていうのか? そう言う想定があるとしても、敵を守る為に味方と戦ってまで止めたりするかな」

「今回の人質にはリュベル王国を代表するライダーや、王族までいるからな。俺たちになにかあって、人質に害が及ぶのは絶対に避けたいはずだ。地方貴族の暴走なんかで、そんなことになったら国の恥だし、損害も大きいと考えてるだろうからな」


「なるほどな。そうなるとリュベル王国内で戦闘が起こる可能性もあるってことだな」

「そうだ。だからお前らボケっとしてないで、少しは緊張持っていろよ」

「ボケっとなんてしてませんわよ、失礼ですわね!」


ジャンはリンネカルロの怒りなど気にする様子もなく、リュベル王国の監視艇であるソウブに同行の了承を伝える。

「こちらアムリア連邦所属の調査艇『ミライ』貴殿の同行を感謝する」


ミライはライドホバーの名称で、渚が勝手につけた。戦闘艦じゃないし、平和的な名称が良いということらしい。まあ、別にライドホバーの名前なんてみんなどうでもよかったようで誰も反対しなかった。


大型ライドホバーのミライは、ライドキャリアのフガクやムサシと比べたら遥かに小さいけど、それでも四機の魔導機を格納できる格納庫、6部屋の個室、食堂、それとシャワールームなどが完備されていた。


そう言えば前から気になっていたんだけど、ライドホバーとライドキャリアの違いってなんだろう……ミライは大きさ的には無双鉄騎団の初期に乗っていたライドキャリアより一回り小さいくらいの大きさはある。大きさで区別していると思ってたからミライがライドホバーだってことになるとよくわからなくなる。


「ジャン、ちょっと聞いていいか? ライドホバーとライドキャリアの違いってなんだ?」

物知りのジャンなら知っているだろうから聞いてみる。

「コンセプトの違いだ。ライドホバーは人が移動する為のもので、ライドキャリアは魔導機を移動させる為のものだ」

さすががジャン、すぐに答えが返ってくる。


「しかし、このミライは魔導機を格納できるけど、ライドホバーだろ? どういうことなんだ?」

「人を移動させるものだが、おまけで魔導機を載せれるってことだな。そう言う考えで作られてるから格納庫より、居住スペースの方が広いだろ?」


確かにそう言われればそうだ。フガクなどライドキャリアは魔導機の格納庫の方が広くスペースがとられている。いつもながらジャンの知識には感心する。俺ももう少しこの世界のことを勉強した方がいいのかな……。

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