第337話 剣王/結衣
しばらく待っていると、遺跡近くに停泊しているライドキャリアからライドホバーが出てきた。おそらくあれにスカルフィが乗っているのだろう。ここでの行動の情報を持っている人物との対面に少なからず緊張する。
「天下十二傑の剣王スカルフィってどういう人だろう」
「あの剣豪団の主戦力で、剣聖ヴェフトの弟子だってことくらいしか私も知らないわね」
まあ、どういう人物かは会ってからの楽しみというところか……。
現れたスカルフィは想像よりずいぶん若い感じの青年であった。剣王なんて異名があるくらいだから四十代の厳つい武士のようなイメージがあったけど、実際は二十代後半くらいのインテリサラリーマンのような人だった。
「援軍をよこせとは言ったが、まさか君のような若い女がくるとはな」
いきなりの失礼な物言いに少しイラっとする。
「援軍に性別は関係ありますか?」
「フッ……いや、関係ないな。どれくらいの実力があるかが重要だ」
「なら問題ないでしょう。結衣は十軍神にも選ばれたエリシア帝国の最高のライダーの一人です」
メアリーが補足するようにスカルフィにそう伝える。十軍神と聞いて不敵な表情から少し真剣な表情へと変化した。
「十軍神ね……。俺もそれに名を連ねる予定だそうだが、この仕事が終わってからだそうだ。さっさと終わらせて表舞台へと戻りたいものだ」
「今は裏舞台にいるということですか」
そう私が聞くとスカルフィは怖い表情へと変わる。
「秘密の作戦行動中だから裏と言えば裏だろうな。しかし! 恥ずべき行動はしていない! 今までもこれからも俺のどんな行動も理由がある!! それが他人からみれば不名誉な事でも、俺は正しいんだ!!」
いきなり激高した口調で言ってきたので少し恐怖を感じた。言葉の意味もちょっと理解できないし、感情の起伏が激しいように感じる。そういえばスカルフィも任務前にニトロルーディアを受けたと聞いている。もしかしたらそれで精神が不安定になっているのかもしれない。
「余計な事を言って失礼しました。気を悪くしたのなら謝罪します」
問題を大きくしないように私は形だけの謝罪をした。それを聞いてスカルフィは落ち着きを取り戻してくる。
「ふーそうだな。俺も少し興奮して悪かった。責められてると思ったのでな……」
やっぱりニトロルーディアで感情が敏感になっているのかもしれない。激高から一転、今度は落ち込んだように表情が変化する。
「それでは話は変わりますが、その秘密の作戦行動についてお聞きしていいですか?」
「そうだな……それでは説明しよう。この遺跡には二人の人物が封印されている。それの解放が任務の目的だ」
「封印されている……その二人は何者ですか?」
「それは俺もしらない。同行している学者が知っているようなので気になるならそいつから聞けばいい」
同行している学者と聞いて、少し嫌な予感がした。おそるおそるその学者について聞いた。
「ブリュレという女の学者だ。いま、遺跡をしらべているから後で会えばいいだろう」
何の縁だがまたあのブリュレ博士と一緒とは……一度、裏切られた経緯があるので、私もメアリーも嫌な気持ちになる。
しかし、スカルフィの話を聞いて一点気になることがあった。ニトロルーディアで強化された天下十二傑と、あのブリュレ博士がいて、援軍を要請しないといけなくなった理由がなんなのかってことである。知識てきにも力的にも問題はなさそうなのだど。
「スカルフィさん、一つ聞いていいですか? あなたほどのライダーがいて、どうして援軍を要請してきたのですか?」
また怒り出すのを警戒して必要以上に丁寧にそう聞いた。
「単純な話だ。俺だけでは対処できない問題があるからだ。すでに同行してきたライダーの半数を失っている。このままでは全滅するだけだったからな」
どうやら十軍神候補が手に負えないような敵がここにいるようだ。ニトロルーディアで強化された自分を試せる……不謹慎だが少しだけそう思ってしまった。
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