第336話 北へ向かう/結衣
新設された私の部隊、001ニトロ大隊、通称ローズニードル隊は北の氷河遺跡へ向かっていた。
ローズニードルの名はメアリーがつけてくれた。ライドキャリア5隻、魔導機100機の戦力だが、全てのライダーがニトロルーディアを受けたエクスランダーの精鋭部隊である。さらにラフシャルにより強化されたヴァリエンテも所属する。大隊規模でありながら、戦力的には旧エリシア軍の軍団クラスの力を有していた。
「かなり寒くなってきたわね」
ライドキャリアにはエアコンのような便利なものは備わってなかった。外気の気温は直に艦内に伝わってくる。ブリッジの中央に魔導暖炉が置かれているが広いブリッジ全体を暖めるには心許無い。
「魔導暖炉一つで足りるかな?」
「聞いた話だと北の氷河遺跡って、地球の北極みたいなところらしいから難しいわね」
「どうしよう……私、寒いの苦手なのよ」
寒い場所だと言うのは聞いていたので防寒着は持ってきていたが、まさか北極並みの寒さとは思って無かった。そんな寒さに耐えれるか自信がないな……。
「大丈夫よ、結衣は寒いの苦手だと思ってもう一つ魔導暖炉を用意してるのよ。しかも大型で空調設備に取り付けるものだから艦内全体が暖かくなるわよ」
「えっ、ホント! ありがとうメアリー!」
私の事を理解してくれている副官で本当に助かる。
北に進めば進むほど景色は雪原へと変わり、さらに進むと氷の世界へと変化していく。もうこの辺には人が住んでいないそうで、いるのは寒さに強い生物だけだそうだ。ブリッジから氷の世界を見ているだけで体の芯から寒くなってくる。メアリーの用意してくれた魔導暖炉がなかったらと思うとゾッとする。
「結衣様、もうすぐ予定地点に到着します」
ライドキャリアの操縦者がそう報告してくる。目的地近くだそうだけど、それらしき建造物は見当たらない。
「氷の壁しか見えないけど、本当にここであっているの?」
「ラフシャル様から提供された座標はこの地点になりますので間違いないかと」
「どう思う? メアリー」
「そうね。ラフシャルが言っている内容からすると、北の氷河遺跡には何か重大な秘密があるってことよね。だったら入り口は目立たないように偽装されていてもおかしくないんじゃない?」
「確かにそうね……この辺りをよく調べましょう」
メアリーの言うように氷河遺跡の入り口はすぐにはわからないように偽装されていた。氷の壁に囲まれた袋小路は一見行き止まりのように見えたけど、奥の氷の壁は立体映像のような偽物で通り抜けることができた。
「古代文明の技術は凄いわね」
近くで見ても普通の氷の壁と区別のつかない立体映像を見ながらメアリーは感心したようにそう言う。
「これだけの技術がありながらどうして滅びたのかしら」
「巨獣との戦いで大きなダメージを受けて衰退していったって聞いてるけど、どうかしらね」
巨獣の昔話はこの世界に来てから色々な人から何度も聞いているけど、高度な文明を築いた人たちでもボロボロになるくらいの激しい戦いだったかと思うとうんざりするような恐怖を感じる。
偽装された壁の先は大きな地下空洞へと続いていた。ラフシャルがいたあの遺跡に雰囲気はよく似ている。どちらも同じ文明が作ったものだから似ていても不思議はないか……。
広い地下空洞のを進んでいると目立った人工的な建造物が見ていてきた。近くに三隻のライドキャリアが停泊しているので、目的地はあそこだろう。
「こちらエリシア帝国軍、001ニトロ大隊。大宰相よりの命により援軍に参った。取り急ぎ詳細を聞きたいのでスカルフィ殿に取り次いで頂きたい」
遺跡に停泊していたライドキャリアからすぐに返答があった。スカルフィがこちらに出向いてくるということなので準備をする。まずは詳細を聞いてから……ここで何をするのか確認しないと。
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